薬剤性肝障害

済生会吹田病院

健康管理センター

大阪府吹田市川園町

薬剤性肝障害の原因と分類

薬剤を服用することで肝臓の機能が障害されることがあり、これを薬剤性肝障害といいます。

肝臓は体の化学工場として、生きていくのに必要な種々の化学反応を担当しています。薬剤の代謝も肝臓で行われることが多く、そのため、薬剤の副作用が生じやすいとされています。

薬剤性肝障害の多くは薬剤アレルギーが原因ですが、解熱鎮痛薬、抗生剤、抗がん剤、睡眠剤や抗うつ剤などでその頻度(ひんど)が高く、まれに死に至ります。一般に副作用が少ないと認識されている漢方薬や市販薬やサプリメント(健康食品)でも肝障害を起こす可能性があります。

何らかの薬剤を服用しているときに食欲不振・全身倦怠感(けんたいかん)・発熱・黄疸(おうだん)・吐き気・皮膚の発疹・かゆみなどの症状が現れたときは、医療機関を受診し、医師や薬剤師に相談してください。

薬剤性肝障害にはいくつかの分類があります。

障害の種類では、肝細胞障害型・胆汁うっ滞型・混合型があり、それぞれ特徴ある肝機能異常を示します。血液検査などで調べます。

薬剤性肝障害の発症様式にもいくつかのパターンがあります。

①たくさん服用してはじめて肝障害が出る場合
これを中毒性肝障害といいます。薬剤やその代謝産物に肝臓への影響がある場合、極めて多くの量を服用すれば肝機能障害が生じます。解熱鎮痛剤に使われているアセトアミノフェンという薬剤などで起こります。
②飲んだ量に関係なく肝障害が出る場合
ほかの人には何もなくても、ある人にとっては少量でも肝機能障害を引き起こす場合では、アレルギーが関与しているとされています。服薬後すぐに、少量でも障害が生じる可能性があります。予測は困難ですが、アレルギー素因の人、過去に同じ種類の薬剤で副作用が出たことがある人は注意する必要があります。
③ある特定の人に肝障害が出る場合
薬剤を代謝する酵素などに遺伝的な個人差があり、薬剤の代謝、分解に影響が出ることで生じる肝障害です。比較的長期服薬後に障害が出ることがあります。
④特殊な場合
ある種の薬剤を長期服用することで、脂肪肝や非アルコール性脂肪肝炎(NASH)を生じることがあります。また、経口避妊薬などを長期服用することでまれに肝腫瘍(かんしゅよう)を発症することがあります。

薬剤性肝障害を防ぎ、早期に発見するためには、ご自身が服用する薬剤の作用・副作用について、普段から医師・薬剤師からよく説明を聞いて理解しておくことが重要です。また、用量・服薬方法はしっかり守ることが必要です。お薬手帳はしっかりと管理し、医療機関を受診する際には必ず持参されることをお勧めします。過去に体に合わなかったり、副作用が出たりした薬剤がある場合は、その薬剤名を記録しておくことも大事です。

更新:2022.03.10