卵巣がんと闘う まず診断、そして手術と化学療法

四国がんセンター

婦人科

愛媛県松山市南梅本町甲

手術+抗がん剤のタイミングが決め手

卵巣の病気はほとんど自覚症状がなく進行するため、しばしばお腹(なか)の中に病変が散らばった状態で見つかります。病気が進んだ状態で診断されることが多いため、子宮がんに比べ治療が難しく、治る可能性も低くなります。

イラスト
図1 卵巣がん

卵巣にはさまざまな種類の腫瘍(しゅよう)が発生し、それぞれに特徴があり、治療方法も異なります。したがって、正確な診断と適切な治療が大事になります。

イラスト
図2 卵巣腫瘍の発生起源
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表 卵巣腫瘍の分類

卵巣がんの治療で大切なことは2つあります。手術でできる限りの病巣を取り除くことと、効果がある抗がん剤をタイミングよく実施することです。状況によっては、手術の前に抗がん剤治療をして、その後手術を行うことでより安全に、効果的に治療が実施できます。お腹の中に病変が散らばったような進んだ状態の卵巣がんには、大きな手術や強い副作用を伴う抗がん剤治療が必要となり、そのいずれも体に大きな負担がかかります。しかし、合併症を恐れて不完全な手術で病巣が残ったり、副作用を恐れて抗がん剤を減量したりすると、最大の効果を得ることができません。手術や抗がん剤治療のメリット、デメリットの評価を慎重かつ十分に行い、副作用をコントロールしつつ、できるかぎり効果のある化学療法を適切なタイミングで実施することが重要です。このあたりのベストなタイミングを見計らうことは、がん専門医の知識と経験に基づくところが大きいといえます。

卵巣がんが再発した場合、治る可能性は低くなります。最初の治療を適切に行うことが大事です。

再発卵巣がんに対する最新治療の試み

進行した状態で見つかった卵巣がんの治療は、初回の治療がうまくいったとしても、現状ではその半数以上は再発します。ある状況では手術が有効ですが、多くは手術で病変を取り除くことが困難な状況で、治療の中心は抗がん剤となります。最近は、再発卵巣がんに効果のある薬剤が複数使用可能な状況になってきました。これら薬剤の使用は、患者さんの病状と副作用などの状況に合わせて工夫する必要があります。

現在、標準治療が実施できる最良の治療法ですが、それでもその治療効果はまだまだ満足できるものではありません。当院では、効果のある新しい治療法の開発に積極的にかかわり、臨床試験や治験の情報提供、実施をしています。これらの治療法の多くは、数年後の標準治療となります。

これからの卵巣がん治療

最近のゲノム医療の進歩により、卵巣がんの原因となる遺伝子が分かる状況になってきました。

今後は原因となる遺伝子に効く薬が標準治療として投与されるような状況になりますが、それにはもうしばらく時間がかかりそうです。当院では、そうした薬剤を使用できる治験を積極的に導入しています。

また特定の遺伝子については、卵巣がんや乳がんになりやすい体質が受け継がれることも分かってきました。家族性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)です。HBOCの方は必ず卵巣がんや乳がんになるわけではありませんが、自分ががんを発症する確率が高いと意識して、予防などの対処をすることは重要です。最近ではHBOCの卵巣がん患者さんに有効な新薬の開発も進んできていますが、当院では治療のみならず、全国に先駆けて発症前に経過を見ていく専門の外来を開設したり、ハリウッド女優が受けて有名となった予防的な手術(卵巣卵管切除)なども実践しており、さまざまな選択肢で対応しています。

更新:2024.10.07