がん検診のすすめ 国民の2人に1人は、がんになるといわれています

四国がんセンター

放射線診断科

愛媛県松山市南梅本町甲

がん検診で早期発見

がんは、かなり前から死亡原因の第1位を占めており、現在も増加し続けています。国民の2人に1人ががんになり、3人に1人ががんで亡くなるといわれ、2016年には37万人を超える人ががんで亡くなっています。

がんによる死亡を減らすために、個人としてできることには、禁煙や生活習慣の改善などでがんのリスクを減らす「がんの予防」や、早期発見を目的とした「がん検診」受診があります。

「検診」とは、ある特定の病気にかかっているかどうかを調べることで、がん検診はその代表例です。ちなみに学校健診、就職時の健診などの「健診」とは健康診断のことで、社会生活が正常に行えるかどうかを判断するものです。

日本は諸外国に比べ検診受診率が低く、厚生労働省は受診率を50%以上とすることを目標に、がん検診を推進しています。

注意が必要なのは、がん検診の対象は無症状の人であることです。明らかな症状がある場合は、それに応じた検査や治療が必要ですので、検診ではなく直接病院を受診してください。

がん検診の種類

厚生労働省は胃がん、子宮頸(けい)がん、肺がん、乳がん、大腸がんの5つのがんについて検診を定めています(表1)。この検診は「対策型検診」という種類のもので、目的は住民の死亡率を下げることです。市区町村が行っている集団検診などがこれにあたります。公的資金を用いて行われますので安価に受けることができます(表2)。対策型検診では、死亡率減少効果が科学的に証明された検査法が用いられています。

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表1 厚生労働省が指針で定めるがん検診の内容
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表2 がん検診の種類

これに対して各医療機関が任意で提供する、がんドックなどの医療サービスを「任意型検診」といいます。「個人」の死亡リスクを下げることを目的としています。基本的には全額自己負担です。検診としての科学的根拠が確立していない検査方法が含まれる場合もありますが、対策型検診よりも対象となるがんの種類が多い、がんを発見する精度がより高いなどの利点もあります。対策型検診だけでは十分でないと思う場合などにご検討ください。検診方法は医療機関によってさまざまです。よく調べて目的に応じて選択してください。

がん検診のメリット、デメリット

1.メリット

症状が出る前に検査することで、がんを早期に発見できる可能性が高まります。その結果、早期に治療が開始でき、救命できる可能性が高くなります。

また、将来がんになる可能性がある病変(大腸がんにおける大腸腺腫(せんしゅ)など)やがんの危険因子が見つかる場合もあり、治療や慎重な経過観察を行うことで、がんの予防や早期発見につながります。

2.デメリット

  • がんがあっても発見できないことがある(偽陰性)。
    がんをすべて発見できる検査法は残念ながら存在しません。小さながん、ほかの陰影に隠れているがんなどを発見できないことがあります。
  • がんが疑われて精査しても、がんがないことがしばしばある(偽陽性)。
    がんが強く疑われる場合のみ精査をすれば偽陽性は減りますが、前述の偽陰性が増えてしまいます。早期発見のためには偽陽性はある程度やむを得ないことです。
  • 寿命に影響のない、おとなしいがんが発見され、治療が行われることがある(過剰診療)。
    がんの中には進行が遅く、寿命に影響しないものもあります。このようながんを通常の危険ながんと区別することは難しく、治療を行わざるを得ません。
  • 検査による合併症が極めてまれに存在する。また一部の検査は放射線被曝を伴う。
    消化管の内視鏡検査では、消化管の壁に穴が開くことがまれにあります。またⅩ線検査やCT検査は放射線被曝を伴います。これによって体に影響が出ることはほとんどありません。がんのリスクについても極めて小さいと考えられていますが、否定はできないため、放射線被曝をできるだけ少なくするように技術開発、検査の最適化が行われています。

がん検診のデメリットを列挙しましたが、デメリットがあるから検診を受けないほうが良いと言っているのではありません。早期発見により、命が助かる可能性があるという大きなメリットがありますので、デメリットも理解した上で、がん検診を受けていただきたいと思います。

更新:2024.01.25