さまざまな原因に応じた慢性肝炎の治療

日本医科大学付属病院

消化器・肝臓内科

東京都文京区千駄木

さまざまな原因に応じた慢性肝炎の治療

慢性肝炎とは?

何らかの原因で肝臓(かんぞう)に持続的な炎症を伴うことで慢性肝炎に罹(かか)ります。原因を排除・コントロールしなかった場合、肝臓の炎症が続き、さらに肝臓の線維化が進行し、最終的には肝硬変(かんこうへん)に至る場合があります。肝硬変になると、門脈圧亢進症(もんみゃくあつこうしんしょう)や肝臓がんを発症することがあるため、慢性肝炎の段階から治療する必要があります。適切な治療をするためにも、慢性肝炎の原因を正しく診断することが重要です。

慢性肝炎の診断と治療

●診断
正しい治療をするためには、正確な慢性肝炎の診断が重要です。ウイルス性肝炎であるB型肝炎の診断にはHBs抗原の測定、C型肝炎の診断にはHCV抗体検査を行います。脂肪性肝炎である脂肪肝は、最終的には肝臓の組織を採取して診断しますが、これは侵襲(しんしゅう)的な(体に負担のある)検査です。そのため、実際には超音波(エコー)やCTなどの腹部画像検査、脂肪肝に付随する糖尿病や脂質異常症、アルコール摂取などの生活習慣病の合併を総合的にみて診断します。
自己免疫性肝炎と原発性胆汁性胆管炎(たんじゅうせいたんかんえん)は女性が発症しやすい慢性肝炎です。自己免疫性肝炎は抗核抗体陽性や免疫グロブリンの1つであるIgGの値が高く、原発性胆汁性胆管炎は抗ミトコンドリア抗体陽性やIgMの値が高いことが多いです。まれに診断が難しい場合があり、肝臓の組織を採取して診断することもあります。
●治療
慢性肝炎の治療の目的は、肝臓の炎症や線維化の進行を抑制し、肝硬変への進展や肝臓がんの発症を可能な限り少なくし、最終的には慢性肝炎に罹(かか)っている患者さんの予後(※1)を改善することです。
B型肝炎は全例が治療対象でないものの、治療の主流はインターフェロンという免疫を高めてウイルス量を減少・排除する治療と、ウイルスの複製を阻害する核酸アナログ製剤を使った治療です。現段階でB型肝炎を治癒させることは困難であり、肝炎の鎮静化や肝臓の線維化、肝臓がんの発症を予防することが目標となっています。
C型肝炎は、現在ほとんどの患者さんが治療対象です。以前はインターフェロンが治療の主流だったため、頻度の多い副作用によって、高齢者や合併症がある患者さんの治療が困難でした。しかし、現在は直接型抗ウイルス剤と呼ばれる、C型肝炎ウイルスを直接排除する飲み薬が登場しています。これは効果も安全性も極めて高い治療で、高齢者や血液透析患者さんなどにも投与が可能です。
国内で最も多い脂肪肝は、食事運動療法が中心です。脂肪肝の治療として保険適用されている薬剤はなく、現在世界中で脂肪肝に対する高い有効性かつ安全な薬剤の開発試験が行われています。
自己免疫性肝炎に対しては副腎皮質(ふくじんひしつ)ホルモン、原発性胆汁性胆管炎にはウルソデオキシコール酸の投与が推奨されています。

※1 予後:今後の病状についての医学的な見通し

図
表 慢性肝炎の診断と治療のために重要な項目

更新:2025.12.12

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