子どものリウマチ性疾患(若年性特発性関節炎など)
日本医科大学付属病院
小児科
東京都文京区千駄木

リウマチ性疾患とは?
リウマチや膠原病(こうげんびょう)と聞くと、大人の病気と思われがちですが、子どもでも罹(かか)る病気です。本来、自分の体を守る免疫システムが、誤って自分を攻撃し、発熱・関節炎・発疹など、さまざまな症状が生じます。自分自身に対する反応であるため、慢性的に経過し、重症度や有症状の期間が長くなると、合併症や後遺症がみられるようになります。そのため、専門家による早期診断と適切な治療が重要です。
小児リウマチ性疾患とはどんな病気?
免疫とは、自分(自己)と自分ではないもの(非自己)を区別して自分を守るためのシステムです。リウマチ性疾患は、本来、細菌やウイルス、がんなどから自分を守るべき免疫システムが、誤って自分の体を攻撃し続けてしまう病気です(図1)。小児リウマチ性疾患はまれな病気で、専門家も少なく、なかなか診断されないこともあります。

頻度のいちばん高い若年性特発性関節炎でも、小児10万人あたり10人程度で、成人関節リウマチの50分の1~80分の1と推定されています。また、小児期に発症してから長い期間、慢性的な経過をたどるため、重症度や合併症から後遺症を残し、子どもの将来に大きな影響を与えてしまいます。それを避けるために、専門家による早期診断と、それに合わせた適切な治療がとても重要な病気です。
どんな症状がみられどう診断するの?
小児リウマチ性疾患は、症状や検査結果からわかる病気のしくみによって分類され、病名がつけられています(図2)。最も多い症状は発熱です。1日の中で上下したり、周期的に発熱したりすることもあります。関節や筋肉の痛みも多くみられ、腫(は)れ・赤み・熱感・動かしづらくなったりすることもあります。

(日本小児リウマチ学会 小児リウマチ性疾患登録〈レジストリ〉研究PRICUREv2データベースをもとに作図)
乳幼児の場合は、その痛みをうまく表現できないため、動かさない・歩きたがらないという症状がみられます。それ以外にも、皮膚、目、口、中枢神経、肺、胃腸、腎臓(じんぞう)、筋肉・骨、血管など、全身にさまざまな症状が現れることがあります。それらの症状の診察と問診、血液検査、超音波(エコー)検査、画像検査などを行って診断していきます。
どんな治療を行うの?
治療によって症状が消失している状態を寛解(かんかい)と呼びます。一度寛解したあとも、再発する可能性があるため、慎重に寛解を維持しながら徐々に治療をゆるめて、最低限の治療薬、もしくは治療薬がなくても寛解状態を維持することをめざします。
治療方法は、病気の種類、重症度などによって異なります。自分に対する免疫の異常な反応を抑えるために、消炎鎮痛剤、ステロイド薬、免疫調整薬、免疫抑制薬などが用いられます。基本的には内服治療が中心ですが、点滴や皮下注射による治療も行います。
重症な患者さんに対しては、異常な免疫反応を強力に抑えるために、ステロイドパルス療法やシクロフォスファミド大量療法などを行いますが、最重症のマクロファージ活性化症候群という合併症を認める場合は、血液浄化療法(全身の血液から炎症物質を取り除く血漿(けっしょう)交換など)を行うこともあります。
一方で、ステロイド薬や免疫抑制薬は、自分に対する異常な免疫反応を抑えるために必要な薬ですが、長期的な使用により副作用が増えてしまいます。そういった副作用を減らすために、薬剤を組み合わせて用いたりします。最近では、従来の治療でコントロールが困難な場合に、生物学的製剤(点滴や皮下注射による過剰な免疫反応を抑える新しい薬。バイオ製剤とも呼ばれています)を用いた治療を行っています。生物学的製剤によって、寛解を維持するためのステロイドなどの治療薬の量や期間を減らすことが可能となっています。
当科の特色 小児科
当科では、免疫疾患チームが小児リウマチ性疾患の診療にあたっています。免疫疾患チームの多くのメンバーは、小児リウマチ性疾患に関するガイドライン作成や、日本小児リウマチ学会の活動に積極的にかかわっています。
実際の臨床においても、近隣の医療機関より小児リウマチ性疾患が疑われる患者さんの紹介を常に受け入れ、最新の知見に基づいて、それぞれの患者さんに適した治療を提供しています。
当院は、地域の質の高い小児がん医療および支援を提供するため、国が定めた指針に基づき、小児がん連携病院に指定されました。また「東京都小児がん診療病院」としても認定されています。
診療実績
小児リウマチ性疾患である若年性特発性関節炎、全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群、若年性皮膚筋炎、強皮症、ベーチェット病、高安動脈炎、家族性地中海熱、PFAPA症候群のほか、慢性疲労症候群、慢性腎疾患、起立性調節障害などの患者さんをフォローアップしています。
外来・入院での診断、治療を行っており、重症例に対しては、血漿交換や白血球除去療法などの血液浄化療法の実績もあります。生物学的製剤を用いた治療も行っています。
更新:2025.12.12
