確かな技術が生み出す検査結果を弛まぬチャレンジ精神 良質な医療情報の提供
大垣市民病院
医療技術部診療検査科
岐阜県大垣市南頬町
はじめに
当院の臨床検査部門は、常に迅速で精確な検査結果を提供しています。また、専門的な知識と技術を備え、県下最多登録者数ともいえる認定専門技師を各部署に配置し、臨床のさまざまな要望に応え活動しています(表1)。
ここでは、県下および全国的な臨床ニーズに対応している、当院の先進的な検査室を紹介します。
最新鋭測定機器と外部評価認定を受けた高精度検査データの提供(中央検査室)
当検査室にて実施している検査項目は、生化学検査、免疫血清検査をはじめ、ウイルス感染症検査、各種ホルモン検査あるいは腫瘍(しゅよう)マーカーなど約200項目、検査件数としては年間約600万件を超え、東海エリアでもトップクラスの実績を誇っています(表2)。
大量の検体を処理するため、2017年の機器更新時に検査結果報告時間の短縮(Turnaround Time)を最大の目的に分析装置のミラー方式を採用した、県下でも類をみない検体検査搬送システム(Laboratory Automation System)と検査情報システムを導入しました。
また、専従の臨床検査専門医を中心に、異常値、パニック値の管理、報告や精度管理を行い、信頼あるデータを毎日提供しています。この検査データの提供のために、各種認定専門技師と臨床検査専門医を中心としたR-CPC(Reversed Clinico-Pathological Conference)や症例検討会を実施しています。
細菌検査部門では、菌血症の診断と適正な抗菌薬選択のために必要な血液培養検査が1,000セット以上と岐阜県下で最多であり、大曲らの報告(1)によると、1,000患者/日あたりセット数の中央値は25.2セットとされていますが、当院は60セットと2倍以上となっています。また、複数セット採取率も95%以上と、県内の加算1施設の平均より高い水準で推移しています。
採血件数も、年間143,000件と県下最多です。採血患者のほとんどが午前中に集中しており、効率的かつ安全に行うために、採血支援システムの導入や患者誤認防止システムの導入がなされ、スムーズな採血が実施されています。
外部精度管理の成績については、日本医師会、日本臨床衛生検査技師会など、常に高い評価を得ています。
いち早い新領域への参画と県下で数少ない施設認定(生理機能検査室)
全国的にも「チーム医療」という言葉のなかった1997年7月より、検査室内での検査にとどまらず、循環器内科での不整脈治療である経皮的(けいひてき)カテーテル心筋焼灼術(しんきんしょうしゃくじゅつ)(高周波・冷凍凝固カテーテルアブレーション)に、そのメンバーとして臨床検査技師がいち早く参加しています(2018年実績:1,066件)。
また、脳神経外科、耳鼻咽喉科、胸部外科、循環器内科などの手術前および手術中の誘発脳波検査モニタリングを2015年より参画し、チーム医療のスタッフとして取り組んでいます(2018年実績:69件)。
さらに当院は、自動聴性脳幹反応(Automated Auditory Brainstem Response)を行うことのできる数少ない施設であり、新生児聴力検査の指定病院に認定されています。
県下初の認定施設取得とモデル病院としての取り組み(輸血センター)
輸血医療は、WHOが各国に求める輸血医療体制に従って、各国の定めるガイドラインを遵守して実施されるものです。国内においても厚労省が定める指針に従って、これを遵守し、安全かつ適正な輸血医療を実施する必要があります。
当院では、日本医療機能評価機構による認定のほか、より厳しい基準とされる日本輸血・細胞治療学会による病院輸血機能評価認定制度において、県下で初の認定を受けており(全国輸血供給医療機関9,700に対して143施設が認定。全国62番目)、極めて高いレベルで輸血の管理・実施体制基準が満たされています。
輸血用血液製剤は善意の無償の献血による、きわめて貴重な医療資源です。これらを安全かつ適正に管理・使用することは、薬害エイズ事件の後、成立した血液新法からも、医療機関の責務です。
当院では、日本輸血・細胞治療学会認定輸血検査技師3人が在籍し、高いレベルの検査体制を有しており、県下ではトップクラスの製剤使用量(単位)と検査数を実施しています(表3)。
また、輸血センター長が務める岐阜県合同輸血療法委員会専門部会においても、全国的なモデル病院として、近隣病院と連携しながら、東海地区、岐阜県内の輸血医療体制を牽引しています。また、国際協力として、JICA(国際協力機構)の選定により、「ケニア共和国輸血血液の安全性確保プロジェクト」の研修施設を担い、派遣指導にも応じてきました。
学会認定資格としての認定医、認定輸血検査技師、臨床輸血看護師、細胞治療認定管理師などの専門性資格保有者や薬剤師、看護師も多数参加し、輸血療法委員会のもと、輸血チーム医療を構成して活動しています。
【参考文献】
1)大曲貴夫:日本の病院における血液培養採取状況および陽性率の実態調査―パイロットスタディ―:日本臨床微生物学雑誌2012-22(1)13-19
更新:2024.08.22