すべての神経疾患に良質の医療を提供 脳梗塞超急性期から神経難病の長期治療まで

大垣市民病院

神経内科 

岐阜県大垣市南頬町

神経内科の診療

神経内科は、脳、脊髄(せきずい)、末梢(まっしょう)神経、筋肉に生じる病気を診療する科です。具体的には脳梗塞(のうこうそく)、一過性脳虚血発作などの脳血管障害、髄膜炎(ずいまくえん)、脳炎などの感染症、アルツハイマー型認知症、パーキンソン病、脊髄小脳変性症、多発性硬化症などの脳変性・脱髄(だつずい)疾患、頭痛、てんかん、脳以外では脊髄炎、ギラン・バレー症候群(急性の末梢神経炎)、筋炎、筋ジストロフィー、重症筋無力症などさまざまです。

診断はベッドサイドでの詳細な神経学的診察から始まります。これには知識と経験と一定の修練が必要ですが、当院の常勤神経内科医師4人と外来を担当している非常勤医師はいずれも日本神経学会の神経内科専門医の資格を有しており、どの医師に受診しても見落としのない安全な診察を受けられる体制になっています。

病気の確定診断のためには、さまざまな検査が必要になります。CT、MRI、核医学検査、超音波検査、脳波、神経伝導検査、筋電図などありますが、当院ではそのすべてに対応しています。特にMRIなど画像検査は、現代の神経疾患の診断には必要不可欠で、脳梗塞、脳炎などの急性疾患では診断の遅れが治療の遅れ、予後不良の経過につながることになります。MRI撮影装置(うち1台は3テスラの高性能機器)3台が稼働しており、夜間休日などの時間外も含め、受診した当日に検査を受けることができます。

また、てんかん診断に用いる脳波や、筋萎縮性側索硬化症(きんいしゅくせいそくさくこうかしょう)などの神経筋疾患に必要な神経伝導検査・筋電図などは、熟練した医師や技師が行い、評価しないと正しい診断にいたりませんが、神経内科医師の1人はこの領域に関連する日本臨床神経生理学会の認定医を有しており、診断の質の向上に努めています。

治療においては、昨今は疾患ごとにガイドラインが作成されているものが多く、当院でも脳卒中治療ガイドラインなど、各種ガイドラインに沿った標準的治療を基本的に行っています。一方では、難治例やガイドラインにはない病態の治療にかかわることも多く、その際には学会、研究会、学会誌などから得られた最新の知見や、これまでの各医師の経験を束ねて神経内科全体で対応しています。複数の医師で疾患にあたることは重要で、独断的で誤った方向へ診断治療が流れていってしまうのを防ぐことができます。

神経内科は脳梗塞超急性期の分単位で診断治療の対応を求められる疾患から、認知症やパーキンソン病のように外来で何年もお付き合いし、介護環境整備のお手伝いを要する疾患まで幅広い領域をカバーする科です。以下にもう少し詳しく、急性疾患として脳梗塞、慢性疾患として神経難病について説明します。

急性疾患の脳梗塞とは

脳梗塞は脳の動脈に血の塊(血栓)が詰まり、血液が流れなくなった部位の神経細胞が障害されていく病気です。発話が不明瞭、手や足が麻痺(まひ)する、半身がしびれる、目が見えにくくなるなど症状が急に現れ、重症な脳梗塞では意識が悪くなります。「表1」に当院の過去5年間の脳梗塞患者さんの入院数を示します。インターネットサイトの病院情報局ナビの患者数ランキングでは、2017年の脳梗塞患者数は岐阜県1位、全国21位で、大変多くの患者さんの診療を行っています。脳出血も加えた脳卒中全体では岐阜県1位、全国29位でした。

  2014年 2015年 2016年 2017年 2018年
脳梗塞 388人 443人 443人 460人 440人
t-PA 療法 14人 18人 15人 12人 15人
表1 脳梗塞、t-PA療法を行った神経内科入院患者数

現在、寝たきりになる原因としては脳梗塞が1位ですが、寝たきりにならないまでも脳梗塞に罹患すると多くの場合、何らかの後遺症が残り日常生活に支障が生じます。前述のような症状があり脳梗塞が疑われるときは、直ちに医療機関を受診する必要があります。脳梗塞であれば、組織プラスミノーゲンアクチベーター(t-PA)という血栓溶解薬を用いた超急性期の治療を受けられる可能性があります。日本脳卒中学会から出されているt-PA療法の適正治療指針第三版では、発症から4.5時間以内に治療可能な脳梗塞患者にt-PA治療を行うことは強く推奨されています。また患者さん説明文書の例として、その効果が海外の臨床試験では、t-PAを使った人の34%が、3か月後に障害のない状態にまで回復し(使わなかった人では28%)、国内の全国調査では33%が障害のない状態まで回復と記載されています。

当院では24時間体制で、神経内科医、脳神経外科医、救急医が協力し、脳梗塞超急性期のt-PA治療を行うことができます。またt-PA治療だけでは不十分な場合や、t-PA治療の適用がない場合でも、脳神経外科医によるカテーテルを用いた血管内治療によって改善できる可能性があります。「表1」に神経内科でのt-PA数を示します。

慢性疾患の神経難病とは

神経難病は進行性で根治的(こんちてき)な治療法がなく、数年から数十年の経過があり、運動障害を主体としたその症状によって日常生活にさまざまな障害が生じます。診断には専門的な知識と経験が必要になり、神経内科に受診して始めて診断がつく場合もあります。また根治的な治療はありませんが、進行や病勢を抑える治療を適用できる疾患もあるため、神経内科専門医でなくては対応が難しい所があり、かかりつけ医の先生からの依頼も多いです。

当院は、岐阜県内で神経難病に携わっている有数の病院で、「表2」に代表的な神経難病の人数を、難病登録されている患者さんから拾い出してあります。このほかにもクロイツフェルト・ヤコブ病、脊髄性筋萎縮症や筋ジストロフィーなど、疾患は多種にわたっています。医学的なこと以外にも難病の申請はもとより、身体障害、障害年金、介護保険など、申請のための診断書作成、日常生活や介護環境への助言、時には就労相談などもあり、患者さんに寄り添い生涯を見守る姿勢が求められます。

神経難病 病名 大垣市民病院 岐阜県総数
パーキンソン病 107人 1437人
重症筋無力症 50人 305人
多発性硬化症 26人 212人
脊髄小脳変性症 20人 383人
進行性核上性麻痺 13人 128人
筋萎縮性側索硬化症 8人 134人
慢性炎症性脱髄性多発神経炎 6人 58人
表2 代表的な神経難病の人数

例えば、筋萎縮性側索硬化症という病気では、進行すると呼吸する力がなくなり、気管切開し人工呼吸器を装着しないと亡くなってしまいますが、人工呼吸器をつけるとその先ずっと寝たきりで過ごさなくてはならず、本人や家族がその決断する際には大きな負担がかかります。そういうときには、しっかりと情報を伝え、どのような治療選択をしても、支えていくよう心がけて診療を行っています。かかりつけ医の先生と連携し、人工呼吸器をつけて自宅で過ごしている筋萎縮性側索硬化症の患者さんもみています。

西濃地域では常勤神経内科医のいる病院は当院しかなく、集中治療を要する重症の患者さんから、日常的な頭痛やめまい症の患者さんまで、すべての疾患に良い医療を提供していけるよう、神経内科スタッフ一同、日々努力を重ねています。

更新:2022.03.14