結石破砕装置を用いた治療で良好な成績 腎尿管結石

大垣市民病院

泌尿器科

岐阜県大垣市南頬町

尿路結石治療ガイドライン

尿路結石(腎(じん)結石、尿管結石)による疝痛(せんつう)発作は、激しい背部痛・腹痛を伴い、しばしば救急疾患となります。近年、尿路結石に罹患(りかん)する患者数は増加傾向で、その要因として、食生活の欧米化、生活習慣病との関連などが指摘されています。

尿路結石の診断には、レントゲン、超音波、CTなどが必要です。尿路結石の位置とサイズ分かれば、「尿路結石症診療ガイドライン」による治療方針のアルゴリズムにより、治療法が決定されます。長径10mm以下では自然排石が期待できますが、自然排石ができない場合は何らかの治療が必要になります。体外衝撃波結石破砕術(ESWL)、経尿道的結石破砕術(TUL)、経皮的結石破砕術(PNL)のいずれかが選択されています。

体外衝撃波結石破砕術(ESWL)

自然排石ができない10mm未満または10mm以上の上部・中部尿管結石などは、体外衝撃波結石破砕術が推奨されています。当院で使用している体外衝撃波結石破砕装置は、優れた操縦性で破砕効率が高く、超音波および透視にて精度の高い焦点位置合わせが可能です(写真)。入院を要せずに外来、日帰りで施行しています。破砕時間は約1時間で麻酔は必要なく、施行前に疼痛(とうつう)用座薬を挿肛するのみです。

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写真 当院にて使用している、体外衝撃波結石破砕装置

同破砕装置を使用した当院での尿路結石の治療は、良好な成績を示しており、論文で報告しています。10mm未満の尿管結石では99.0%の完全排石率(平均回数1.2回)、10mm以上の尿管結石においても94.9%の完全排石率(平均回数1.5回)でした。

20mm以上の腎結石に対しては、「尿路結石症診療ガイドライン」で経皮的結石破砕術(PNL)が推奨されていますが、PNLは入院して全身麻酔での治療となります。PNLによる治療がさまざまな理由で困難な場合には、当科では選択肢として体外衝撃波結石破砕術(ESWL)を提示しています。

当科における20mm以上の腎結石に対するESWLの成績は論文で報告しており、結石消失率37.9%、4mm以下残石34.5%(有効率72.4%)でした。国内での20mm以上の腎結石に対するESWLの成績報告は稀であり、貴重なものとして評価されています。しかし、ESWLのみ単独で行うのではなく、ほかの治療法を要する場合があるため、患者さんの充分なご理解が必要となります。当院では腎尿管結石に対して、年間のべ約350回ESWLを施行していますが、施行数は岐阜県随一です。

尿路結石に対する内視鏡手術

長径10mm以上の尿管結石や20mm以上の腎結石は内視鏡治療の対象となります。

まず、尿管結石に対しては経尿道的結石破砕術(TUL)を施行します。当院では腰椎(ようつい)麻酔を行った上で、尿道より細径硬性尿管鏡を使用し、尿管結石直下まで到達させ、そこからレーザーで破砕し、結石を抽出します。また、経尿道的アプローチで、軟性尿管鏡を使用して腎結石を破砕・抽出する場合もあり、f-TULと呼ばれています(図1)。昨年は、TULによって89症例を施行しました。入院期間は約4日間です。20mm以上の腎結石に対しては、経皮的結石破砕術(PNL)を施行しています(図2)。全身麻酔を行い、背部からのアプローチにより、内視鏡を挿入して直視下に結石を確認し、破砕します。

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図1 尿管結石に対する経尿道的結石破砕術(TUL)(図版提供:ボストン・サイエンティフィック ジャパン株式会社)
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図2 腎結石に対する経皮的結石破砕術(PNL)(図版提供:ボストン・サイエンティフィック ジャパン株式会社)

最後に、腎尿管結石のサイズ、位置、硬さなどによっては、ESWL、TUL、PNLそれぞれの単独治療のみでは成功しない場合があります。その場合は、この3種類の治療法を併用することによって、stone free(結石がすべて排出されること)を目指すことになります。

更新:2022.03.08