専門性を生かした、薬剤部のチーム医療への参画 がん医療と急性中毒診療への貢献

大垣市民病院

薬剤部

岐阜県大垣市南頬町

がん専門薬剤師によるがん医療への取り組み

日本医療薬学会認定がん専門薬剤師13人が在籍し、レジメン審査・登録・管理、抗がん薬調製、治療内容の監査など、院内のがん薬物療法が安全に実施できるように管理するとともに、病棟、通院治療センター、薬剤師外来で専門性を発揮しています(図1)。

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図1 がん専門薬剤師の配置

1.レジメン登録・抗がん薬調製

2019年7月現在、外来レジメン384、入院レジメン662が登録されています。レジメン審査・登録・管理はがん専門薬剤師の重要な業務の1つです。

抗がん薬調製は、安全キャビネットにおいて十分な曝露対策を施した環境下で休日も薬剤師が調製しています。特に危険度の高い抗がん薬の調製には閉鎖式接続器具(CSTD)を使用しています(写真1)。調製件数は約950件/月です。

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写真1 安全に配慮した抗がん薬調製

2.経口抗がん薬に対する薬剤師による医師の診察前面談(薬剤師外来)

外来服薬指導室において、がん専門薬剤師が経口抗がん薬を対象に薬剤師外来を行っています。初回は、医師の診察後に抗がん薬の種類、服用方法、副作用に関する説明を行います。2回目以降は、医師の診察前に服薬状況の確認、副作用モニタリング、支持療法薬の処方提案、残薬調整などを行い医師に情報提供します(図2)。また、自宅での治療となるため「困ったときの対応策」として電話相談も実施しています。面談件数は約200件/月で、そのうちの約40%の患者さんにおいて薬剤師から医師に助言・提案などを行っています。薬剤師外来における残薬調整金額は約50万円/月に上ります(1)。

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図2 薬剤師外来の流れ(2回目以降)

3.通院治療センター・病棟での関わり

通院治療センターおよびがん患者さんが入院する各病棟において、がん薬物療法が安全に行えるように治療内容の説明、監査、副作用マネジメントなどに積極的に関わっています。通院治療センターでは、がん専門薬剤師を中心に1日2人の薬剤師が担当し、治療内容の説明、副作用マネジメントなどにおいて中心的な役割を担っています。*通院治療センターでの活動については「「チームOASiS」の活動で、さらに充実した体制へ 通院治療センターの役割」を参照。

急性中毒診療へのバックアップ

1.中毒チーム薬剤師による情報活動

当院の救命救急センターは年間4万人の患者さんを受け入れており、そのうち急性薬物中毒の患者さんは約80件(異物誤飲を除く)になります。急性薬物中毒は、緊急性の高い疾患の1つであり、迅速な原因物質の特定と治療の開始が予後を決める重要な因子となる一方、対象となる薬毒物は数万種類に及ぶため、専門的な対応が必要となります。そのため、薬剤部では中毒チームを立ち上げ、24時間体制で急性薬物中毒患者さんの治療に必要な情報提供や原因物質の分析、治療方法の提案、処置後のフォローアップなどを行い、救命救急センターの活動を支えています。

中毒チームは1979年より活動を開始し、現在は日本中毒学会認定クリニカル・トキシコロジストの資格をもつ2人を含めた13 人のメンバーで構成しています。急性中毒患者さんが来院したときには、救命救急センターへ出向き、医師、看護師、救急隊員、家族や患者さん本人から情報を集め、中毒原因物質の確認を行い、毒性および治療法についての情報提供を行います。また常日頃から、一定水準の中毒対応が行えるように分析機器のメンテナンスや解毒剤・拮抗剤の管理も実施しています。中毒チームの活動を図3に示します。

フローチャート
図3 中毒チームの活動

2.中毒原因物質同定を目的とした中毒分析

2012年に救命救急センターが開設された際に薬物分析室が設けられ、より高度な中毒分析が可能になりました。現在、GC-MS、LC-MS/MS、分光光度計などの分析機器をそろえており、1,268成分(医薬品312、違法薬物635、自然毒62、農薬259)の検出が可能となっています(写真2)。中毒チームが中心となって現在までに68件の薬毒物分析を行い、その内訳は、睡眠導入剤、向精神薬、覚せい剤、消毒剤、農薬など多岐にわたり、対象物質に応じて分析機器を使い分けています。2014年の診療報酬改定の際に「急性薬毒物中毒加算1」(5,000点/回)が特定の13品目を測定した場合に算定可能となり、現在までに18件を算定しています。

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写真2 薬物分析室(GC-MS、LC-MS/MS)

【参考文献】
1)『経口抗がん薬服用患者に対する薬剤師外来における残薬確認の有用性』郷真貴子、川地志緒里、宇佐美英積、木村美智男、吉村知哲、医療薬学、44、280-287、2018

更新:2022.03.08