読影補助の現状 co-medicalとしての連携体制

大垣市民病院

医療技術部診療検査科

岐阜県大垣市南頬町

読影補助について

医療の中で「読影」とは、診療放射線技師が撮影した画像や動画、検査結果から画像診断を行い、その所見より現在の病態を読み取る作業です。今後に必要となる検査や、治療方針の決定を行うために非常に重要な役割を果たすもので、一般的に医師が行っているのが現状です。

しかし2010年4月30日に厚生労働省医政局長から、多くの医療専門職がそれぞれの専門性を最大限に発揮し、連携・協議して双方的なコミュニケーションをとり、患者中心の医療を提供していくことを目的に、診療放射線技師がチーム医療の一環として①画像診断における読影の補助を行うこと、②放射線検査等に関する説明・相談を行うこと、という主旨の「医療スタッフの協働・連携によるチーム医療の推進について」が通知されました。

当院の読影補助の歴史は厚労省通知の35年前、1975年のバリウムを使った消化管透視、点滴静注胆道造影と核医学のシンチグラフィの所見コメント作成から始まります。当時の診療放射線技師は、外科と消化器内科の症例検討会に必ず参加し、そこで自己のスキルアップのために消化器内科医師に勧められて始まりました。

その後、1978年にCT検査と超音波検査、1986年に血管造影検査、そして1989年にMRI検査の所見コメントの提出を開始しました。またその後、当院のIT化が進み、2007年にレポーティングシステムが導入され効率が飛躍的に向上しました。そして2008年、PET-CT装置の導入に伴い一次読影が開始され、現在に至ります(図1)。

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図1 所見コメントの実際

現在では単純X線写真と頭部・整形領域のCT検査を除いたほぼすべての検査画像が対象となり、年間113,472件(2018年度実績)の一次読影を行っています。また読影補助は夜間・休日の救命救急業務中でも例外なく行っているまれな施設です(1)。

当院の読影補助の効果とそのシステム

「画像診断」は一人でも多くの「眼」で、多方面からの視野で所見を検索することが大切で、症例検討会などを行っていますが、日常の外来診察中は不可能です。しかし、そのような場合でも診断医のみならず診療放射線技師が行う読影補助は、複数の医療関係者が一つの画像を診るという点では、病態、疾病を検出する上で患者さんの診断に大きく貢献していると考えます。

救命救急X線撮影室のCT検査に読影補助を導入する前の2011年と、導入後の2012年の6~7月の2か月間の所見の見逃し件数を検討した結果、導入後は見逃し件数が減少傾向にあり、特に緊急に加療が必要となった所見の見逃しは半減しています(2)(図2)。

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図2 胸腹部CTにおける画像所見の見逃し件数の推移

当院の読影補助のシステムは、まず私たち診療放射線技師が「一次読影者」として所見コメントを作成します。そして検査依頼医や放射線診断医が「二次読影者(診断確定医)」として、所見コメントと画像を見ながら所見レポートを完成させます。

所見レポートはCT検査の場合、効率と迅速性を重視して撮影者とコメント作成者が別で対応しています。また超音波検査の場合は、撮影者がベッドサイドで直接患者さんに接して行う検査のため、規則正しく整列した断層像が安定して得られるCTやMRI検査と異なり、撮影者の個性やスキルにより撮影法や得られる画像が異なる場合もあるため、必ず撮影者が自ら行います。これはバリウム等による胃や大腸の消化管造影検査も同様で、検査中に気づいた所見や病態、患者さんの様子を余すことなく所見コメントに反映させるためです。

読影補助の一環としてパニックデータ報告があります。これは検査中に想定外所見や重篤な病変を撮影者が発見した場合、即座に検査依頼医や主治医にその旨を報告するシステムです。これにより重篤な病態がそのまま放置されることなく、無症状の重病患者さんへの対応も飛躍的に短縮されます。

より良い読影補助を行っていく上で私たちが日ごろ心がけていることは、症例検討会に参加し、医師とのコミュニケーションが密にとれるような環境を整え、数多くの症例の特徴を学習することです。そして放射線診断医からの所見レポートのフィードバック(図3)は、読影補助を行っていく上で非常に重要な教材となっています。さらに、学術活動があげられます。当部門の学術活動は活発で、内容も技師対象の学会のみならず、医師や工学系、専門家が集う全国レベルの大会にも数多く発表し、日頃から自己研鑽に励んでいます。また講演依頼も多く、共著もたくさんあります。

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図3 放射線診断医からのフィードバック

これらの活発な活動の裏には各自の熱意・向上心もありますが、院長をはじめとする当院の手厚い支援体制があります。この制度は私たちの学術活動の原動力の一つとなっています。

最後に

今後も私たち診療放射線技師はco‐medical(コメディカル)として自己研鑽を惜しまず、最良の画像情報の提供をすると共に、充分な知識と経験に裏付けされた読影補助と連携で、チーム医療の一員として地域の皆さまの健康維持に貢献していきます。

【参考文献】
1)安部威彦、他:救急医療における診療放射線技師の読影補助の現状と課題(アンケート調査からみた読影補助のあり方について).日本診療放射線技師会誌 2018, vol.65 no.789, 668-693.
2)市川宏紀、他:夜間・休日救急診療における診療放射線技師によるCT読影補助の効果.日臨救急医学会雑誌(JJSEM),2014, vol.17,no.4, 535-542.

更新:2022.03.08