背が低い子どもたち
済生会吹田病院
小児科
大阪府吹田市川園町
成長ホルモン分泌不全性低身長とは
統計学的に身長が標準偏差でマイナス2・0SD未満の子どもを「低身長」といいます。具体的にいうと、クラスや学年で一番小さい子どもです。背が低いことを病気だと思っている人は少ないと思います。成長のパターンも人それぞれなので、いつかは大きくなると本人や家族も希望を持っていることが多いようです。
しかし、身長が平均より大きく外れている場合や、急に身長の伸びが悪くなった場合に何かしら病気が隠れている可能性があります。まれですが、骨の病気、染色体異常、下垂体腫瘍(かすいたいしゅよう)などが見つかることがあります。
また、原因はよく分かっていないのですが、脳から成長ホルモン(骨を成長させ身長を伸ばすホルモン)の分泌が悪く、低身長になる子どもがいます。この場合、出生歴、成育歴、家族歴、血液検査に加え、成長ホルモンの分泌を促す薬剤を投与して成長ホルモンの分泌能をみる”負荷試験”を行い、「成長ホルモン分泌不全性低身長」と診断します。
成長ホルモン分泌不全性低身長の場合には、成長ホルモン製剤を注射することで身長を伸ばすことが期待できます。成長ホルモンは生理的には睡眠時に分泌される量がピークになるため、それに合わせて毎日就寝前に自宅で保護者、または本人が自分で皮下注射します。「家で、自分たちで注射なんて!」と皆さん初めは抵抗がありますが、最近の針は細くて短く、安全かつ正確に注射できるペン型の注射など、簡単に注射ができるよう工夫されており、ほとんど痛みを感じないことから直ぐに慣れてきます。
この成長ホルモン補充療法は、注射すると急に大きくなるわけではなく、数年をかけて徐々に子ども本来の身長に追いついていきます。ただし身長は思春期が終わり、骨に伸びる余地がなくなると効果がなくなるため、少なくとも小学校の低学年までには始めておきたい治療です。そのためには幼少期から子どもが小柄であることを気にかけて、医療機関で定期的に診てもらっておく必要があります。
身長が低いことで消極的な性格になったり、子どもの自尊心が傷つけられたりしていることがあります。身長が伸びることで精神的にも自信が出てくるという効果もみられます。サッカーのメッシ選手も成長ホルモンによる治療を行い、いまや世界のスーパースターです。
当院の特徴としては、ダウン症の子どもに対して成長ホルモン補充療法を積極的に行っています。ダウン症では多くのお子さんで低身長になることが知られています。成長ホルモンの分泌が悪いダウン症のお子さんに成長ホルモン補充療法を行うと、身長が伸びるだけでなく、筋力が増して発達が促されることがあります。
背が低いのは”仕方がない”と諦めるのではなく、小児科のお医者さんに相談してみてください。子どもの未来が拓けることがあります。
更新:2024.01.26