DMATによる災害医療活動

浜松医科大学医学部附属病院

救急部

静岡県浜松市東区半田山

DMATとは?

DMAT(ディーマット)(Disaster Medical Assistance Team)は、災害医療支援チームです。鉄道事故や爆発事故のような局地災害や、地震や水害といった広域災害のときに、緊急出動します。阪神淡路大震災をきっかけにつくられ、目的は「防ぎえた災害死をなくす」ことです。

DMATの隊員は、災害拠点病院などの職員の中から、都道府県を通して厚生労働省に推薦され、4日間の研修を受講し、知識と技術を習得します。災害時には1チーム4~5人(医師1人、看護師2人、業務調整員〈そのほかの医療職や事務職〉1~2人)で出動します。現地では、複数のDMATが協力して活動します。

2016年熊本地震での活動

熊本地震では、当院からは1チームが派遣されました。阿蘇地区に設置されたADRO(阿蘇地区災害保険医療復興連絡会議)で活動しました。

地震直後のけが人の治療が活動中心の時期(急性期)から数日が経つと、避難所や地域内の高齢者施設などから、さまざまな要請が上がってきます。一方で、医療だけではなく保健や福祉の多様な支援チームが全国から入ってくるため、それらのチームを調整する組織が必要とされます。ADROはそれを担いました。

また、静岡県庁に設置されたDMAT静岡県調整本部にもDMAT隊員が出動し、静岡県内から熊本県内に向かうチームの派遣調整および後方支援にあたりました。静岡県から派遣されたチームは、継続的に阿蘇地区で活動し、ADROでの活動のほか、地域病院での夜勤業務などにもあたりました。

2020年新型コロナ感染症での活動

DMATは本来、CBRNE災害(C/化学、B/生物的、R/放射線、N/核物質、E/爆発物)と呼ばれる特殊な災害には、出動しないことになっていました。そういった特殊災害に対しての訓練は、行われていなかったためです。

東日本大震災のときにも、原子力発電所の事故による高線量地域ではR(放射線)災害と判断され、活動を行いませんでした。しかし、2020年1月に発生したクルーズ客船における新型コロナ感染症の集団感染では、B(生物的)災害と考えられましたが、厚生労働省から全国のDMATに対し、派遣要請が出ました。当院からも、DMATが複数回出動し、船内での医療活動や本部活動に従事しました。

さらに2020年夏には、浜松市内で新型コロナ感染症の患者さんが急増しました。当院のDMATは他病院のDMATとともに、まずは市役所の新型コロナ感染症調整本部の支援を行いました。その後も、保健所やクラスターが発生した病院や高齢者施設などで、感染症の専門チームと協力して支援にあたりました。

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写真1 新型コロナウイルス感染症
(浜松市新型コロナ感染症調整本部)

熱海土石流災害での経験

2021年7月に発生した熱海市での土石流災害では、熱海保健所に設置されたDMAT活動拠点本部で活動を開始し、情報収集、指揮命令系統の確立にあたりました。さらに、土石流災害現場近くでの活動を行いました。

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写真2 熱海市土石流災害

被災者の治療にあたることはもちろんですが、暑い中で救助にあたっていた消防、警察、自衛隊の方々などの支援も念頭に置いての活動でした。

また、ホテルに設置された避難所には、多分野・多職種の支援チームが活動していたため、熱海保健所を中心としてのコーディネート活動の支援にもあたりました。

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写真3 地域の医療救護訓練への協力

更新:2023.10.26