AI 技術が医療を変える!AI画像診断支援、内視鏡解析装置
札幌医科大学附属病院
呼吸器・アレルギー内科
北海道札幌市中央区

テレビ番組などでもよく見かけるAI技術。最新のAI技術は医療の現場でも活用されつつあります。現在、医療画像の多くがデジタル化されており、画像解析はAI技術の得意とする分野でもあります。当院は、胸部レントゲン写真上で間質性肺炎(かんしつせいはいえん)を見つけ出すAIソフトウェアの開発や、腸炎の程度を色で示す内視鏡解析装置の開発などを行っており、これらの病気の早期発見、さらには予後(*)の改善につながることが期待されています。
*予後:今後の病状についての医学的な見通し

AI技術の発展は医療を変える
AI(人工知能)は私たちの生活の中にどんどん取り込まれ、便利なくらしを支えています。天気を予想したり、早く着く道順を選んだり、また画像や動画上での顔認識も可能になりました。
AIが出現するまでは、人間が日々の経験や過去のデータを分析して判断していた作業を、AIは過去のデータを学習することで修得します。たくさんの事例を繰り返し学習することにより、全く同じ事例を学習していなくとも、学習した特徴を組み合わせて同じものかどうかの判断を下します。ヒトの脳に無数にある神経細胞(ニューロン)を真似したニューラルネットワークという構造を複雑に用いた深層学習(ディープラーニング)の開発は、AIの性能を飛躍的に向上させました(図)。

例)いろいろなブラームスの写真をAIに学習させることによって、学習したことのない写真でもAIは「ブラームス」と認識できる
医療にもAI技術は使われてきています。例えば、薬を作るときに病気の原因となるタンパク質にうまくくっつく物質をAIで見つけることで、より効果的な薬を短時間で作ることができる可能性があるといわれています。また、患者さんの状況から、これから使おうとする薬の効果や、その後の病気の進行を予測する技術も開発されています。
レントゲン画像で間質性肺炎を検出するAIソフトウェアの開発
近年、医療画像の多くはデジタル化されていて、その解析はAIの得意とするところです。これまでもレントゲン写真から肺腫瘍(はいしゅよう)や結核を見つけたり、胃カメラで異常を見つけるプログラムが発表されています。当院はエムスリー株式会社(本社・東京)と共同で、胸部レントゲン写真上で間質性肺炎を見つけ出すAIソフトウェアの開発を行っています。
間質性肺炎は肺の間質という部分に炎症が起きたりして、少しずつ硬くなってしまう病気です。いろいろな原因で起こりますが、原因不明の場合もあり国の難病に指定されています。一旦硬くなってしまったところは元に戻らないことも多く、多くの患者さんにとって早めの発見と治療が重要だと考えられています。
しかし、胸部レントゲン写真で間質性肺炎の特に早期の患者さんを見つけるのは意外と難しいのです。レントゲン写真では皮下脂肪や肋骨(ろっこつ)、心臓や横隔膜など前後方向の影が同時に写ってしまうため、「薄い」影のことが多い間質性肺炎を見つけるのは呼吸器専門医や放射線専門医ですら難しいことがあります。
私たちは間質性肺炎の患者さんの画像と、そうではない画像をAIに深層学習させました。出来上がったAIソフトウェアはレントゲン写真が間質性肺炎の患者さんのものかどうかの確率を計算し、読影する医師に示してくれます。テスト用の画像を用いた性能試験では、8割から9割の患者さんを見つけ出すことができるのではないかとの結果が出ています。最終的には読影する医師の判断が必要になりますが、このソフトウェアを使うことにより、見落としが少なくなることが期待されます。
更新:2024.09.23