寒い時期に増加する脳出血、くも膜下出血

メディカルブレイン編集部

年末が近づき、寒さも一段と厳しくなってきました。冬にはインフルエンザやノロウイルスなど、さまざまな病気が発症しやすくなりますが、「脳出血」と「くも膜下出血(まくかしゅっけつ)」も冬に増加する病気のひとつです。これらの病気は後遺症が残ることが多く、場合によっては命にかかわる深刻な状態に陥ることもあります。
冬にこれらの病気が増加する理由や注意すべきポイントについて、詳しく見ていきたいと思います。

脳出血、くも膜下出血はどんな病気?

脳出血とくも膜下出血は、どちらも脳の血管が破れることによって引き起こされる病気です。
これに対して、脳の血管が詰まることで引き起こされるのが脳梗塞で、これらの病気を総じて「脳血管疾患(脳卒中)」と呼んでいます。

2020年の脳血管疾患の患者数は174.2万人(男性94.1万人、女性80.1万人)で、そのうち60歳以上の患者数が約154万人と9割近くを占めています。※2020年厚生労働省「患者調査」より

また、2022年の人口動態調査によると、脳血管疾患は日本人の死因の第4位(全体の6.8%)となっていますが、1970年をピークに低下傾向が続いています。ただし、要介護の原因としては第2位となっており、死亡率は改善していますが、後遺症が残りやすい病気と言えます。

脳出血、くも膜下出血の詳細については以下の解説ページをご覧ください。

脳出血とくも膜下出血が冬に増加する理由

脳血管疾患の中で脳出血とくも膜下出血は、寒い時期に発症率が上昇することがわかっています。

脳出血やくも膜下出血の主な原因のひとつに高血圧があります。気温が低下すると、体は熱を逃がさないように血管が収縮し、普段よりも血圧が上昇しやすくなります。そのため、もともと血圧が高い人はもちろん、そうでない人も脳出血やくも膜下出血のリスクが高まります。

また、冬季は屋内から屋外に出る際や、暖かい部屋から寒いトイレや浴室に行く際など、寒暖差の大きい状況が頻繁に生じます。そのたびに血圧は急激に変動し、脳の血管に大きな負担をかけ、脳出血やくも膜下出血を引き起こす要因となります。

イラスト:暖かい室内では正常な血管で血圧安定、寒い脱衣所では血管収縮し血圧上昇、寒い浴室では血管収縮しさらに血圧上昇、暑い浴槽では血管拡張し血圧低下

一方で、脳梗塞は夏に多く発症すると言われています。これは、夏は脱水症状が起こりやすく、血液中の水分が減り、血液粘度が上がって血栓ができやすくなるためです。言い換えれば、冬でも脱水状態になると脳梗塞の発症の危険度は高まります。冬はこたつや電気カーペットなどの暖房機器で室内が乾燥しやすくなるため、十分な水分補給を心がけましょう。

早朝高血圧「モーニングサージ」に注意!

通常、健康な人の血圧は1日の中で緩やかに変動し、夜は低く、朝は高くなります。これに対し、起床時前後に血圧が急激に上昇する現象をモーニングサージと言います。

モーニングサージタイプの人は、そうでない人に比べて脳卒中や心筋梗塞(しんきんこうそく)のリスクが2倍以上高いと考えられています。

特に、起床してからの1~2時間が最も危険な時間帯で、気温が低い時期は血圧がより上昇しやすくなるため、モーニングサージタイプの人は十分注意が必要です。

起床時には急激な動きを避け、布団の中でゆっくり手足を動かしてから起き上がるように心がけましょう。また、布団から出る際は、上着を羽織るなどして体が冷えないように注意し、血圧の上昇を最小限に抑えるように気を付けましょう。

【モーニングサージの確認方法】

朝と夜の血圧を測ることで、自分がモーニングサージかどうか確認できます。

① 朝目覚めた時、起き上がる前の状態で血圧を測定し、記録します。
② 夜就寝前、安静な状態で血圧を測定し、記録します。
③ ①と②を数日間繰り返します。
④ 数日間の朝と夜の血圧の平均値をそれぞれ出します。朝と夜の血圧の平均値の差が55mmHg以上ある場合がモーニングサージタイプに該当します。

イラスト:就寝前に血圧を計っている女性、起床後に血圧を計っている女性

寒い時期に脳卒中にならないための予防策

急激な血圧上昇が、脳出血やくも膜下出血のリスクを高める大きな要因です。冬季は寒暖差により急激な血圧変化が起こりやすく、特にモーニングサージタイプの人は注意が必要です。
以下に、冬に行いたい具体的な予防策をあげました。

【外出時の対策】
外出の際は防寒対策を心がけ、体を冷やさないように気を付けましょう。朝のゴミ出しなどのほんの少しの外出でも、油断せずに上着を羽織るなどの工夫が重要です。
【室内での注意】
家の中でも、暖かい部屋から寒いトイレなどに行く際は、防寒対策を欠かさずに行いましょう。
【入浴時の工夫】
入浴時には、脱衣所や浴室を事前に温めておきましょう。シャワーでお湯を出しておいたり、湯船のふたを開けておくことで浴室内を温めることができます。寒い脱衣所で服を脱ぎ、熱いお風呂に入ると血圧が急上昇することがありますので特に注意が必要です。
【事前に体を動かす】
暖かい場所から寒い場所に行く際は、事前に手足を動かしたり軽く足踏みするなどして、体を温め、急激な温度差に適応できるように準備しましょう。

これらの対策を実践し、血圧の管理や体温調節に気を配ることは、脳卒中リスクを軽減するための重要なポイントです。寒い時期は特に注意し、適切な予防策を講じるようにしましょう。

更新:2024.04.26