食物アレルギーってどうしたらいいの？～予防や治療について～

食物アレルギーとは、その人にとって原因となる特定の食物によって免疫が過剰に働いてしまい、体にとって良くない症状が現れる病気です。皆さんの中には、何かを食べたときに「じんましんが出る、咳（せき）が出る、吐いてしまう」といった経験がある方もいらっしゃるかもしれません。

このような一般的な食物アレルギーのほかにも、花粉症が原因となる口腔（こうくう）アレルギー症候群や、食べるだけでは症状が出ませんが、食べた後の運動などが発症に関与する食物依存性運動誘発アナフィラキシーなどの食物アレルギーもあります。

原因となる食品の頻度（ひんど）は、乳幼児期には鶏卵・牛乳・小麦が多く、年齢とともにピーナッツやエビなどの甲殻類、果物などが増えます（図１）。最近では、ナッツ類（くるみやカシューナッツなど）のアレルギーが増えてきています。

アレルギーの原因となる物質（アレルゲンといいます）によって、アレルギーが生じるようになることを「感作（かんさ）」といいます。その人が感作されるのには、さまざまな経路があると考えられています。例えば、花粉症が空気の通り道（気道）から花粉に感作することはイメージしやすいのではないかと思います。

最近では、皮膚のバリア機能が低下することで皮膚から感作する「経皮（けいひ）感作」が注目されています。皮膚のバリア機能低下は、赤ちゃんであれば乳児湿疹、アトピー性皮膚炎によって起こります。この経皮感作が食物アレルギーを発症するリスクの１つとして 重要であることがわかってきました（図２）。

先ほど「経皮感作」が注目されているとお話ししました。赤ちゃんの肌をきれいに保つことが、食物アレルギーの発症に非常に重要であることがわかってきています。そのため、小児科や皮膚科では赤ちゃんの湿疹（乳児湿疹）を適切なスキンケア、保湿剤やステロイド外用剤の塗布でしっかり治療しています。

以前は、アレルギーになりやすい食物をお母さんが妊娠中や授乳中に除去したり、お子さんが食べ始めることを遅らせたりすることで、食物アレルギーを予防できるのではないかと推奨されたこともありました。しかし、その後のさまざまな研究により、これらの方法ではお子さんの食物アレルギーを予防する効果がないことがわかりました。

食物アレルギーの治療は、原因となる食物の除去を一律に行うだけではなく、除去が行き過ぎないように必要最小限の除去に留めるように栄養食事指導を行います。そのためには、その食物が本当にアレルギーの原因となっているのか、どの程度であれば安全に食べることができるのか、といった正しい診断を行う必要があります。血液検査結果などをもとに、食べることができる量を推定し、原因となる食物を実際に食べてもらう食物経口（しょくもつけいこう）負荷試験を行います。管理を行いながら、少しずつ食べることができる量を増やして、日常的に食べる量まで増やしていきます。

患者さんの中には、除去を続けていても食べることができるようにならない方もいます。そのような患者さんに対しては、専門とする医師の指導の下で、少ない量から少しずつ原因となる食物をあえて食べる「経口免疫療法」を行う場合があります。ただし、この治療法ではその過程で、予期せぬアレルギー症状が現れる可能性があることから、一般診療としては推奨されていません。専門的な診療を希望の方は、まず、かかりつけの小児科に相談してください。

原因となる食物を除去をしている期間に誤食した際、あるいは栄養食事指導・経口免疫療法として食べている際などに、予期せずアレルギー症状が現れることがあります。その場合は、症状に応じて治療を行います。例えば、抗ヒスタミン薬と呼ばれる薬の内服、気管支を広げる薬の吸入を行います。アナフィラキシーと呼ばれる生命に危機を与えるような強いアレルギー症状が現れる場合には、アドレナリンという薬の筋肉注射を行います。詳しくはかかりつけの医師に相談してください。