乳房治療 新たな選択肢の登場-乳がん先端治療・乳房再建センター
富山大学附属病院
消化器・腫瘍・総合外科 形成再建外科・美容外科
富山県富山市杉谷
チーム医療を目指すセンター
医療の進歩とともに乳がんの治療もさまざまな分野の検査、治療があり、たくさんの専門的技術が必要となります。乳がん先端治療・乳房再建センターでは多くの部門が密に連携して、乳がん診療に特化しチーム医療として治療体制を提供できます。それぞれの部門について紹介します。
外科部門:乳がん手術を担当します。
乳房部分切除、乳房全切除を中心とし、蛍光法およびRI法を併用した最新のセンチネルリンパ節生検も提供しています。この方法により術前化学療法後でも正確なセンチネルリンパ節生検が可能です。最新の治療として遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)の方へリスク低減乳房切除術(RRM)が可能です(詳細後述)。また、乳がん看護認定看護師による心理的サポート、意思決定の支援、術後リハビリ・リンパ浮腫(ふしゅ)予防などのセルフケア支援を行っています。
形成外科部門:乳房再建を担当します。
乳房再建で失った乳房を美しく治すことが可能で、患者さんの生活の質“Quality of Life”の向上に貢献します。患者さんの状況により、がん手術と同時に再建を行う場合と、しばらく経過してから再建する場合があります。また再建法には自家組織再建(穿通枝皮弁法(せんつうしひべんほう)・脂肪注入法)、人工物再建(インプラント法)など、患者さんの希望に沿った選択が可能です。
遺伝子診療部門:遺伝性乳がんの診断や遺伝カウンセリングを担当します。
乳がんや卵巣がんになりやすい遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)の検査を行うだけでなく、認定遺伝カウンセラーによる遺伝に関する心理的・社会的影響、倫理的な課題などを患者さんあるいはその家族へ分かりやすく説明する遺伝カウンセリングが可能です。
がんゲノム・集学的がん診療部門:薬物治療や緩和ケアを担当します。
最新の抗がん剤や分子標的治療薬、免疫チェックポイント阻害剤を積極的に導入しています。また、がんゲノム医療拠点病院を担っており、がん遺伝子パネル検査にて遺伝子変異に合わせたがん治療も可能です。
放射線部門:画像診断や乳房照射などの治療を担当します。
術前にがんの進行度を把握するために、CT検査やMRI検査を行います。3Dマンモグラフィも導入し“高濃度乳腺”においても乳がん検出能が向上しています。
病理部門:乳がんの病理的診断を担当します。
乳房のしこりや分泌物の原因を判断し良性、悪性を診断します。また、乳がんの種類や性質、広がりや進行状況を診断し、術前術後の補助療法の必要性を判断します。
最新の検査
- 遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)の診断ができます。乳がんの5~10%がこのHBOCで、乳がんや卵巣がんになりやすいことが知られています。確定診断するためにはBRCA1/2検査が必要です。この検査には患者さんの状況によって、自費診療と保険診療に分かれますが、いずれも対応可能です。
- 「Oncotype DX検査」は、術後の補助療法としての“抗がん剤が効果的かどうか”、また、“10年間の再発リスクを予測する”検査です。多遺伝子診断検査として21遺伝子群の発現を分析し、検査結果をもとに、患者さん一人ひとりへの治療計画を個別に判断することが可能となります。
- 「がん遺伝子パネル検査」はがん組織を用いて、“次世代シークエンサー”にて100以上の遺伝子を同時に調べます。遺伝子変異が見つかった場合には、複数の専門家で構成された委員会(エキスパートパネル)によって検討され、効果が期待できる薬があるかどうかを探索します。ただし、この検査は誰でも受けられるわけではなく、また、検査を受けても必ず治療法が見つかるわけではありませんので、希望がある場合は一度ご相談ください。
- 「3Dマンモグラフィ(トモシンセシス)」を導入しています。この3Dマンモグラフィを用いることで、がんの発見率の増加と良性疾患を正確に診断する能力が向上しています。特に日本人に多い“高濃度乳腺”においても乳がん検出能が向上しています。
最新の治療
遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)で、すでに乳がんを発症した場合は、反対側の乳房ががんになる前に予防的に切除するリスク低減乳房切除術(RRM)というものがあり、この治療が保険診療となりました。また、HBOCと分かっていて、まだがんを発症する前にも両側のRRMを施行し、乳がんを予防する治療(アンジェリーナ・ジョリーさんが受けた治療として有名)が可能です。
さらに形成外科部門にて同時再建も可能で、再建方法も血行再建を伴った自家再建を行うことができ、軟らかく自然な形の乳房を作ることができます。
更新:2024.10.04