知って防げる心筋梗塞!なったときの治療は?
循環器内科
全国3位の死亡者数
突然死ニュースで「死因は心筋梗塞(しんきんこうそく)」と聞いても、自分は心臓病がないので無関係と思っていませんか。発症は急ですが、病気に至るまでにはさまざまな経緯があり、高血圧、糖尿病、高脂血症、肥満などの身近な生活習慣疾患に加え、喫煙が発症の危険因子となります。長寿県といわれる、福井県でも、この心筋梗塞の死亡者数は人口10万人対、全国3位(2020年度厚生労働省、人口動態統計より)となっています。
心筋梗塞が心臓に及ぼす影響についてお話します。心臓は手足の筋肉と同じ横紋筋からなり収縮して体中に血液を送り出すポンプの働きをしています。この筋肉には「冠動脈」と呼ばれる心臓のための血管があり、そこを流れる血液から酸素や栄養分を受けています。この血管に血流障害が起こり、完全に途絶するのが「心筋梗塞」です。心筋への血流途絶により心筋収縮を行えなくなり、ポンプ機能が低下し、体へ必要な血流を送り出せない状態となります。特に急性心筋梗塞では、急激に心筋ダメージが起こるためショック状態となり、緊急に冠動脈の血流途絶解除が最優先で、血流再開させることが心機能保持のために必要となります。
冠動脈形成術とは
冠動脈に血流障害が起こる現象は、血管を水道管に例えると、その内側にサビやゴミが壁に積もって流れが悪くなることと同じで、この堆積物は、高血圧、糖尿病、高脂血症により長時間かけ溜(た)まったもので、動脈硬化と呼ばれます。狭くなった血管を「薬物療法」のみで元に戻すことは困難で、冠動脈への血流回復のためには、狭くなった箇所を機械的に押し広げることが必要になります。手首や、足の付け根の血管から内科的にカテーテルと呼ばれるストロー状の管から道具を冠動脈内に運んで狭くなった箇所を広げる冠動脈形成術です。
冠動脈形成術(図)は、風船で押し広げる方法が1977年から行われていますが、広げた箇所が再び狭くなる「再狭窄(さいきょうさく)」が起こるため、1985年には押し広げた箇所に、この再狭窄予防のために金属性の網「ステント」を留置する療法が開発されました。それでもなお、動脈硬化の勢いは強く、再狭窄を完全に防ぐことが困難です。このため最近開発されてきているのが、薬剤を塗ったステントです。このステントの登場で、再狭窄の問題は大きく改善されました。しかし、高齢社会となり動脈硬化も高度となり、冠動脈には石灰化と呼ばれる歯と同じ成分のものが沈着し、風船やステントでは押し広げられない病変も出てきました。これらの病変に対して、用いられるのがロータブレーター(ドリルのようなもの)で、これを使って血管の固くなっている部位を削ることが可能となっています。効果は絶大ですが、重大な合併症も起こりうるため、習熟した医師が行わなければ危険が伴う療法です。特に当院は、これら特殊な機器を用いることが可能な施設認定を受けており、県内でも唯一24時間、循環器内科医が毎日、待機しており必要な治療を遅れることなく行えます。
心筋梗塞への治療は進歩していますが、これらの疾患により心筋が弱ってしまうことを完全に防ぐことは困難です。これらの疾患が起こらないよう、危険因子といわれる生活習慣病の予防に、日頃から心掛けてください。
更新:2024.07.04