難治性過活動膀胱に対する新たな治療
泌尿器科
難治性過活動膀胱について
過活動膀胱(かかつどうぼうこう)は、突然に起こる我慢できないような強い尿意(尿意切迫感)を主な症状とする病気です。トイレの回数が多く、尿失禁でお困りの患者さんも少なくありません。年齢とともに過活動膀胱の患者さんは増加し、60歳代で10人に1人、70歳代では5人に1人が該当すると考えられています。
これまでの治療は飲み薬や貼り薬を中心に、生活習慣を見直したり、膀胱に尿を溜(た)める訓練を行ったりするものでした。しかしながら、治療を続けても症状が十分に良くならない患者さんや、持病や副作用で治療を続けられない患者さんもおられます。そのような方への良い治療法が国内にはありませんでした。
難治性過活動膀胱の治療
このような難治性の患者さんに対し、欧米ではボツリヌス毒素の膀胱壁内注入療法、神経変調療法(しんけいへんちょうりょうほう)が行われています。いずれも低侵襲(ていしんしゅう)な(体への負担が少ない)治療となります。国内でもこれらの治験や治療が始まる見込みとなりましたので本項で説明します。
ボツリヌス毒素膀胱筋層内注入療法(図1)
この薬は筋肉を緩める作用がありますので、膀胱の不随意な収縮を抑えます。国内ではすでに眼瞼痙攣(がんけんけいれん)の治療などに使用されています。過活動膀胱では内視鏡を用いて膀胱の中から膀胱壁に細い針で薬を注射します。この治療法は、有効性と安全性を確認するための治験が当院を含め複数の医療機関で実施されており、今後普及することが期待されます。
神経変調療法
この治療法は電気や磁気で神経を刺激し、その働きを整えることで過活動膀胱の症状を改善させると考えられています。国内ではごく一部の医療機関で磁気刺激療法が行われていましたが、仙骨神経刺激療法(せんこつしんけいしげきりょうほう)(図2)を行うことが可能となります。
この治療ではまずⅩ線テレビで確認しながら臀部(でんぶ)の神経近くに刺激電極を埋め込みます。試験刺激期間に治療効果を確認できれば、刺激機械を体内に埋め込みます。2回の手術を必要としますが、治療効果はボツリヌス毒素よりもずっと長く続きます。
手術治療を好まない、または受けられない患者さんもいらっしゃると思いますが、当院では、ほとんど侵襲がない経皮的電気刺激療法も臨床研究として行っています。興味のある方は泌尿器科外来稲村(水曜)、堤内(木曜)までご相談ください。
更新:2023.09.11