首の傷はどこへ? 福井大学の甲状腺内視鏡手術法

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

見えない傷で甲状腺腫瘍を摘出する

甲状腺は、図1のように首の前面に位置し、代謝や成長を調節するホルモンを分泌する重要な臓器です。腫瘍が生じやすく、手術が必要となる場合も少なくありません。多くは良性腫瘍ですが、がんが発生することもあります。従来の甲状腺手術では首の前面を約12cm程度切開して腫瘍を摘出しますが、当科では「首の前面に傷を残さない内視鏡手術(図2A,B)」を実施しています。

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図1 甲状腺は前頸部にある
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図2A 手術風景
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図2B 手術方法の模式図

当科では年間約120例の甲状腺手術を行っており、そのうち約40例を内視鏡で行っています。

内視鏡補助下甲状腺手術(VANS)

首前面はケロイドが発生しやすく、通常に切開する手術では傷跡が残る可能性があります(図3)。

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図3 甲状腺術後の創部が目立つ場合もある

当院では

  • 服で隠れる鎖骨下を約2.5cm切開する鎖骨下法
  • 髪の毛に隠れる耳の後ろを切開する耳後部法

の2つの方法で行っています。

鎖骨下法では創部は衣服で隠れますが、襟元の広い服装や下着姿、水着姿では見える場合があります(図4)。

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図4 鎖骨下法による創部

そこで当科では、さらに創部が目立たない方法として耳後部法を導入しています。
耳の後ろを切開するというと驚ろかれるかもしれませんが、耳鼻咽喉科では日常的に手術で扱う部位であり、とても慣れています。
耳後部法の創部は図5に示すように外観からはほとんど分からなくなります。この方法を保険診療として継続的に実施している大学病院は、現時点で福井大学に限られます。

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図5 耳後部法の術後3カ月 傷がわかりますか?
(うなじの部分にあります)

福井大学における治療実績

当科では年間約120例の甲状腺手術を行っており、うち年間約40例がVANS手術です。
令和8年2月1日現在で、VANSを計230名の患者様に実施してきました。

その内訳は

耳後部法:52例
鎖骨下法:178例

当院では、通常切開もVANS手術も安全性(神経麻痺等の合併症)が変わらないことを確認しています。

対象となる主な症例

現在当科では、

良性腫瘍:
おおむね6cm程度まで
甲状腺がん:
甲状腺全体の大きさでおおむね4cm程度まで

をVANS手術の対象としています。

※最終的な適応は、腫瘍の位置や広がり、全身状態などを踏まえて個別に判断します。

治療をご検討の方へ

首の傷が目立たないことは、手術後の日常生活や気持ちの面に大きく関わります。
手術方法について詳しく知りたい方、ご自身が対象となるか相談したい方は、どうぞお気軽にご相談ください。

※当院では、甲状腺手術が必要な患者様に、首の前側を切開せずに行う内視鏡下甲状腺手術を保険診療で実施しています。手術方法には、鎖骨の下の前胸部から行う鎖骨下アプローチ法と、耳の後ろから行う耳後部アプローチ法があります。

特に耳後部アプローチによる内視鏡下甲状腺手術は、国内でも実施施設が限られる術式ですが、当院では保険診療として継続的に実施しています。適応は疾患の種類、腫瘍の大きさ、進行度、既往歴などを踏まえて個別に判断します。

更新:2026.05.15