安全な医療を提供する高機能手術室

福井大学医学部附属病院

手術部

福井県吉田郡永平寺町

最先端医療機器が配備された手術室

当院手術部では、手術室を10室有し、24時間体制で年間約6000例以上の手術が行われています。外科系で13科、内科系で7科の合計で20の診療科が手術室を利用しています。

広い手術室スペースに種々の医療機器が配備され、高度で先進的な治療を行っています。以下にこの「高機能手術室」における手術機器や治療について紹介します。

ハイブリッド手術室

通常のメスなどを用いる観血的な外科手術のみならず、血管内手術を行えるように、最新の高解像血管撮影装置を配備した手術室です(写真1)。血管内手術は通常放射線部で行われますが、ハイブリッド手術室は清浄度が高く、緊急時にも速やかに対応できるという点で、感染対策や医療安全面で非常に優れています。

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写真1 ハイブリッド手術室

術中CT

1997年、当院の手術室に国内初の自走式術中ヘリカルCT装置が導入されて以来、これまで多くの手術に利用しています。術中CTは、主に脳神経外科で使用され、特に脳腫瘍(のうしゅよう)や脊椎(せきつい)・脊髄(せきずい)の手術にはきわめて有用です。術中に病変や脳の状態が分かるため、手術の確実性、安全性が向上します。

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写真2 術中CT装置を使用した脳神経外科手術

内視鏡手術・手術支援ロボット手術(ダヴィンチ)

近内視鏡手術が普及し、多くの診療科で行われています(写真3)。胸腹部臓器のみならず、関節や脳の手術にも特殊な内視鏡が使用されています。内視鏡手術は、皮膚切開が小さく早期に離床できて回復も早く、何といっても低侵襲(ていしんしゅう)(体に負担の少ない)であることがメリットといえます。

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写真3 内視鏡を使用した婦人科手術

この内視鏡が、さらに進化したものが手術支援ロボット装置(ダヴィンチ)です(写真4)。2013年に福井県内で初めて当院に導入されました。術者は直接患者さんに触れることはなく、遠隔操作でロボットアームを作動させます。アームの精緻な動きにより、従来の腹腔鏡手術(ふくくうきょうしゅじゅつ)よりも精度が高く安全な手術が可能であり、さらなる手術成績の向上が期待されます。

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写真4 ロボット支援装置「ダヴィンチ」(黒矢印)による前立腺がん手術。白矢印が術者

ナビゲーション手術

手術で使用するナビゲーションシステムは、カーナビと同じ原理です。病変(車の場合は目的地)に向かうルートをコンピューターが案内してくれますので、道に迷うことがないのは車の運転と同じです。脳神経外科、整形外科、耳鼻咽喉科などの手術で汎用されています(写真5)。術中CTと連動させたナビゲーション手術も行われ、より精度と安全性の高い手術が可能です。

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写真5 ナビゲーションシステム(矢印)を使用した耳鼻科手術。耳鼻科用内視鏡も併用している

電気生理学的神経モニタリング

神経機能の温存のために、種々の神経モニタリングが行われています。脳神経外科手術、整形外科の脊椎手術、耳鼻咽喉科の顔面神経に関連する手術などで汎用されています。

覚醒下手術

大脳にある言語中枢を温存するための特殊な脳神経外科手術です。主に言語中枢近くの脳腫瘍の摘出術で行われ、特に腫瘍の境界が不鮮明なグリオーマの手術にきわめて有用です。言葉を理解したり喋ったりできる「覚醒状態」での手術であり、高度な麻酔技術が必要です。

術中蛍光診断(光力学診断)

蛍光色素を利用して、腫瘍や血管などを描出する技術です。5-ALAという物質を手術の数時間前に内服し、脳に紫外線を当てると腫瘍が赤く光ります。これにより腫瘍の境界が分かりやすくなり、摘出が容易になります。また、ICGという色素を静脈内に投与して近赤外線を当てると血管が光ります。術中では主に血流の評価に利用されています。(図6)

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図6

更新:2024.07.04