手術を行う患者さんに安心・安全をお届けする周術期医療

愛知医科大学病院

周術期集中治療部

愛知県長久手市岩作雁又

これまでの周術期管理

手術治療は、成功・不成功がはっきりと出る、いわばダイナミックな治療であるため、手術患者さんは時として、大きな不安や心配を持つこともあるかと思います。

周術期というのは、手術を受けるために外来を受診されたときから始まり、手術を終えて治療が完了するまでの期間を指します。非常に長い期間にわたりますが、これまでは、主治医や執刀医が中心となり管理が行われてきました(図1)。そのため主治医は多くのことに気を配らなくてはならず、負担が大きくなってしまうという欠点を持ち合わせていました。

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図1 これまでの周術期医療の概念

周術期管理チームという取り組み

手術に対して、主治医や執刀医が指示を出す従来の方式では、ほかの医師や病院スタッフは受動的にしか動けなくなります。一方で指示を出す側の負担は増加するため、疲労が蓄積し、手術に対しても100%の実力が発揮できない事態が危惧されます。これでは、手術患者さんへの安心・安全な医療の提供が十分にできないことになりかねません。

そこで、主治医が手術執刀のみに専念できる環境を提供するために生まれたのが、周術期管理チームという取り組みです(図2)。

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図2 周術期管理チームによる周術期医療の変化

当院では、麻酔管理を必要とする手術患者さんには、麻酔科周術期管理センターで周術期管理チームが手術に関する治療の流れと麻酔についての説明、禁煙を含む生活指導、栄養指導、病院内診療科に対する合併症治療の依頼、口腔(こうくう)内管理指導、手術に対する心配・不安に対するケアなどを行います。

手術時は麻酔科医が全身管理を担当し、手術後は必要に応じて総合集中治療室(GICU:General Intensive Care Unit)にて、回復のための集中治療を行います。このように、主治医は、患者さんの術後管理を周術期管理チームに任せることで、手術に専念することができます。

回復期を担う総合集中治療室

手術直後の回復期は、呼吸や循環(血圧や脈拍)が不安定な状態であり、注意深く治療を進めていく必要があります。また、手術後に痛みが強い状態が続くと、術後の回復が遅れてしまう原因となります。

通常、一般病棟では看護師の配置が病床数7床に対して1人とされており、大きな手術後の患者さんを看護するには負担が大きくなる傾向があります。

これに対し総合集中治療室は、看護師の配置が病床数2床に対して1人となっていることと、医師が24時間勤務していることで、より手厚い看護や治療が可能になります。このように手術患者さんに安心・安全な医療サービスの提供が行われています。

更新:2024.10.21