造血細胞移植センターー「オール・フォー・ワン」で患者さんを診る

愛知医科大学病院

造血細胞移植センター

愛知県長久手市岩作雁又

造血細胞移植とは

造血(幹)細胞移植(ぞうけつかんさいぼういしょく)は、抗がん剤や放射線治療ののち、血液の種(たね)となる造血幹細胞を輸血する治療法です。白血病や骨髄異形成症候群(こつずいいけいせいしょうこうぐん)、骨髄腫(こつずいしゅ)、アミロイドーシス、悪性リンパ腫、再生不良性貧血などの患者さんが対象になります。用いる造血幹細胞により、骨髄移植や末梢血(まっしょうけつ)幹細胞移植、さい帯血移植と呼ばれます。他人(ドナー)の血液を用いると同種(どうしゅ)造血細胞移植、患者さん自身の血液を用いると自家(じか)造血細胞移植になります。造血細胞移植の利点として、抗がん剤や放射線治療の効果を高められます。特に同種造血細胞移植は、造血幹細胞自体の入れ替えに加え、「同種免疫効果」による強い抗がん作用が期待できます。

臓器横断的・集学的に移植を行う国内初の組織

一方、造血細胞移植は強い副作用が生じやすい治療法です。副作用を未然に防ぐ、あるいは適切に対処するには、全身くまなくみる診療姿勢(臓器横断的診療)と、全診療科・部門の連携(集学的診療)が必要です。集学的診療には、心の支援やリハビリ、専門知識を有する看護師のケア、栄養指導、移植後の健康管理なども含まれます。当院は以前から、特定機能病院としての高度医療と円滑に統合された臓器横断的・集学的診療体制を活かし、患者さん一人ひとりに丁寧に造血細胞移植を行ってきました。また、造血幹細胞の採取に関しても、ドナーと患者さんの安全性を第一に考え実践しています。2014年新病院開院後は、最先端の無菌室(写真)も整備され、当院で造血細胞移植を受ける患者さんも増えてきました(図)。患者さんの期待に応え、臓器横断的・集学的移植体制の連携強化を目的に、2018年1月、造血細胞移植センターが設置されました。造血細胞移植は14B病棟で行われますが、「造血細胞移植センター」は場所ではなく、連携自体を指しています。血液疾患に関わる診療科(内科・小児科・輸血部)にとどまらず、臓器横断的・集学的診療を主眼とした造血細胞移植センターの設置は日本では珍しく、注目されています。

写真
写真 高機能無菌室は、がん化学療法や造血幹細胞移植後の感染症予防に有用です
図
図 当院の造血細胞移植実施数は増加しています

当院造血細胞移植センターの特色

私たちの活動は、病院内にとどまりません。当院には、国内で唯一造血細胞移植における国際協調や国内外の情報収集・発信などを目的に、造血細胞移植振興寄附講座(http://www.aichi-med-u.ac.jp/su06/su0607/su060704/01.html)が設置されています。同講座は、アジア太平洋血液骨髄移植学会の事務局と世界血液骨髄移植学会のアジア支局も兼ね、国内外の造血細胞移植に関する情報が集約されています。さまざまな疾患に対し、造血細胞移植が治療として適切かどうか、どの時期に、どのように移植を行うべきかなどの知見は、日々更新されています。私たちは、同講座と緊密に連携し、国内外の最新の情報に基づく最善の治療を提案・実践することができます。さらに、小児・成人の患者さんを問わず、再生医療や間葉系(かんようけい)幹細胞治療、キメラ抗原受容体(こうげんじゅようたい)発現T細胞療法などの免疫療法も視野に、細胞治療センターとも連携しています。

私たちは、アミロイドーシス患者さんへの自家造血幹細胞移植にも積極的に取り組んでいます。アミロイドーシスは単独、または骨髄腫に合併して生じます。特に骨髄腫に合併する場合、骨髄腫と同様、自家造血幹細胞移植も重要な治療選択肢になります。一方アミロイドーシスは、ほぼ全臓器に起こりうるため、臓器横断的・集学的診療体制が望まれますが、そのような施設は限られます。当院は、もともと今井裕一博士(現名誉教授)が起点となり、腎臓・リウマチ膠原病(こうげんびょう)内科や血液内科、循環器内科、病理診療科などが緊密に連携し、全国有数のアミロイドーシス診療拠点施設となっています。造血細胞移植センターとして、アミロイドーシス患者さんの全診療経過にかかわることで、タイムリーに造血幹細胞移植を実施できます。

当院造血細胞移植センターのミッション

私たちのミッションは、当院の特色と強みを最大限に活かし、血液疾患を治す・健康な社会生活を取り戻すことにより、患者さんと社会に貢献することです。また、私立大学病院としての利点を活かし、自由な発想と研究的姿勢を堅持しながら、機動的かつ弾力的に、造血細胞移植診療をさらに発展させることが大切と考えています。

更新:2024.01.25