小児脳神経外科疾患に対するチーム医療

愛知医科大学病院

脳神経外科

愛知県長久手市岩作雁又

各自・各部署が連携するチーム医療

脳神経外科の主な治療対象の疾患には、脳血管障害、脳腫瘍(のうしゅよう)、脊椎(せきつい)・脊髄(せきずい)、頭部外傷、先天奇形、機能的疾患、炎症性疾患などがあります。当科における小児脳神経外科の対象領域は、小児において発症したこれらの疾患すべてを対象としています。

子どもの治療には、さまざまな部署の協力が必要となります。胎児・新生児においては産科医、新生児科医と連携し、乳幼児・学童期においては小児科と連携します。また、術後は麻酔科、病棟スタッフと連携し、外傷では救命救急科と連携しています。さらに、それぞれの病態に応じた他科との連携や、術後はリハビリテーション科、医療福祉相談室と連携し、子どもの成長を大切にしながら、退院後の地域での家族生活を見据えた医療を提供してます。また、小児は検査時に鎮静剤を使用することがあり、外来、中央放射線部と協力しながら行っています。

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写真1 外来診察室

このように各自が専門性を生かし、常に各部署との連携がとれていることが当院の特長といえます。

長期的な視野での医療提供

小児脳神経外科領域の病気は小児期のみではなく、成人となった後でも引き続き治療が必要となります。当科全体でのカンファレンスを週に2回行っており、常に各専門領域の脳神経外科医と意見を交わし、お互いに協力しながら適切な医療を行う体制を整えています。この体制により、胎児・新生児・乳幼児・学童・成人と、長い年月を視野に入れた医療を提供することができます。

小児頭部外傷に対する長年の治療経験

小児は成人の縮小版ではなく、脳を守る膜、骨、皮膚、すべてが成人とは異なります。しかも、小児期の中でも年齢によってその構造に違いがあります。さらに外傷の場合、その損傷の程度により治療法も異なります。

当院は長年、地域における3次救急を担ってきており、小児頭部外傷に対しても長年の治療経験があります。

頭蓋内圧(ずがいないあつ)モニター、脳波モニターなどを24時間設置することで頭蓋内病変の変化をリアルタイムで把握し、血圧管理・体温調整・呼吸器設定などにより、頭蓋内圧を常に最適な状態に保てるよう治療を行っています。

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写真2 集中治療室で使用する各種モニター

小児の慢性頭痛に対する病態解明

小児の慢性頭痛の原因には、さまざまなものがあります。まず、外科的治療が必要なものが潜んでいないかをMRIなどで評価します。小児の慢性頭痛の原因としての多くは片頭痛・緊張型頭痛などですが、それ以外の特殊な病態として、小児期の自律神経のバランスの不十分さから生じる、起立障害性頭痛(立っている状態によって増強する頭痛)があります。これらの疾患が考えられる場合には、小児科と相談の上で治療を行います。これらが除外され、症状・神経所見・画像所見などから脳脊髄液減少症が考えられる場合には、当科で治療を行います。

脳脊髄液減少症は、成人の頭痛の原因として世間で知られるようになってきていますが、最近では小児においても、スポーツや転倒などの軽微な頭部外傷を契機に発症することが知られてきています。しかし、その病態は明らかではなく、適切な診断方法、治療法は確立していません。そのため、小児の脳脊髄液減少症に対する病態解明、診断・治療法の開発を目的とした「脳脊髄液減少症の非典型例および小児例の診断・治療法開拓に関する研究」が行われており、将来的にはその治療指針に沿った治療が行われるようになるものと思われます。

小児脊椎脊髄疾患

当科は成人の脊椎脊髄疾患に対する豊富な治療経験を持っており、小児においても新生児からすべての脊椎脊髄疾患に対し、対応が可能となっています。特に頭蓋頚椎移行部疾患については、子どもの成長に合わせた段階的な手術により、良好な成績が得られています(写真3)。

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写真3 小児頭蓋頚椎移行部疾患

更新:2024.01.26