先手必勝の戦略的予防医療ー未病を可視化(見える化)したマーナ(mRNA)健康外来

愛知医科大学病院

先制・統合医療包括センター(AMPIMEC)

愛知県長久手市岩作雁又

生活習慣病としてのがんの増加

最近、死因年次推移分類別にみた日本人の死亡数(人口10万対)は、第1位・がん、第2位・心疾患、第3位・肺炎、第4位・脳血管疾患の順となっています。ここ数年で第3位と第4位の順位が入れ替わった背景は、国内の「超高齢社会」を反映しているものと考えられますが、がんは依然として年々増加の一途をたどっています。

今や、日本人の2人に1人はがんに罹患(りかん)し、3人に1人はがんで死亡しているとも報告されています。また、2013年のがん死亡数は1985年の約2倍とも報告されており、今後も、男女ともにがん死亡数と罹患数は増加し続けることが予想されます。

「健康寿命延伸」に合致した健康外来

国(厚生労働省)、愛知県、長久手市などでは種々の健康目標(健康日本21)を策定し、中・長期的な視点から生活習慣病(がんを含む)を予防し、少しでも「健康寿命延伸」を実現することにより、個々人の生活の質(QOL)の向上を図ろうとしています。

当院は、2015年5月14日から国内外の大学病院で初めて、マーナ(mRNA)発現解析を活用したがん関連遺伝子リスク診断および長寿遺伝子(Sirt1)活性化診断を実施する外来、マーナ(mRNA)健康外来を開設しました(写真)。本外来は、未病の段階からのがんのリスク診断(男性8臓器・女性11臓器、図1)および長寿遺伝子(Sirt1)活性化診断(図2)をごくわずかな採血量で可能とした、非常に画期的な専門外来です。本外来を介して、地域中核病院である当院が、①生活習慣病(特に、がん)を未病の段階から、より早期にリスク診断し、将来の健康状態を予測する、即ち、②先手を打ち意識付けをし、行動に変容を起こさせ、個々の生活習慣病を予防・改善・治癒(ちゆ)に導く(生活習慣への介入・指導・管理)ことが、当院の担う最大の社会貢献と考えています。これにより、「健康寿命延伸」をより一層実現することが可能となり、個々人の生活の質(QOL)の向上へつながると考えています。

写真
写真 マーナ外来診察風景
図
図1 各種がん関連遺伝子のmRNAが高値を示した時に対応する各種臓器がん(男性・女性)
図
図2 長寿遺伝子(Sirt1)活性化診断

本外来を十分に活用することで、より早期からの疾病リスク診断が可能となり、単なる予防医療でない真の意味でのSelf-medication(発症前に自分で病気の芽を摘む医療)が大いに期待できるのです。これらの観点から、戦略的予防医療として位置付けられます。

体に負担の少ないエコ医療検査

診断のための検査は、1検査当たりわずか2.5mlの採血(通常健診での採血量の4~5分の1)のみです。採血回数は、毎年1回でも可能で、体に負担の少ない検査方法と考えます。定期検査は、患者さんの生活スタイルに合わせて対応しています。

検査後1か月で、がんのリスクの総合評価・判定

検査の約4週間後、資格を有する専門医師が各々の個人情報を十分に配慮しながら、がん関連リスク、長寿遺伝子(Sirt1)活性化診断の結果を説明します。検査した「遺伝子の働き」を“可視化(見える化)”した報告書に沿って、リスクの総合評価とその判定について詳細に説明しますので、非常に理解しやすいと考えます。

リアルタイムPCR法により得られた関連遺伝子別の検査データを5段階で評価しており、全体の総合評価については、「健常」「標準」ゾーンなら「低リスク」となり、「やや注意」「注意」ゾーンであれば「中リスク」となります。「警告」ゾーンの場合は「高リスク」として評価します。リスクが高いからといって、即がんを発症するわけではなく、がんになる前のがん細胞の状態、がんを発生させやすい状況を予測するのです。また、種々の結果を踏まえ、個々人の生活習慣に関する今後の指導・管理に関しても同時に実施しています。

更新:2024.01.26