睡眠医療の最前線ーあなたの眠りを守る

愛知医科大学病院

睡眠科 睡眠医療センター

愛知県長久手市岩作雁又

睡眠障害全般の治療に尽力

夜に眠れない、いびきがうるさい、夜中に大声を出して暴れる、朝に起きられない、昼に眠気が強い、そんな悩みの背後に睡眠障害は潜(ひそ)んでいます。

あなたの眠りを守りたい、そして毎日を健康で豊かに暮らしていただきたい。そんな願いを込め、2008年1月に日本初の独立診療科(院内標榜)として睡眠科を開設しました。睡眠科・睡眠医療センターでは、不眠症のみならず、睡眠時無呼吸症候群、ナルコレプシー(*1)、むずむず脚症候群(*2)、レム睡眠行動障害(*3)、概日(がいじつ)リズム睡眠覚醒障害(すいみんかくせいしょうがい)など、あらゆる睡眠障害の診断と治療に日夜、取り組んでいます。

*1 ナルコレプシー(過眠症):夜きちんと眠れているのに、昼間に強い眠気が襲う「居眠り病」です。国内での有病率は600人に1人。仕事中、授業中、試験中でも構わず居眠りを始めるので「怠け者」などと周囲の誤解を受けやすい病気です。
*2 むずむず脚症候群(レストレスレッグス症候群):座っているときや横になっているときに、脚を動かしたくて我慢できなくなる病気です。脚の不快感でなかなか眠れず、著しい不眠をもたらします。
*3 レム睡眠行動障害:夢で見たとおりに叫び暴れる、大声でわめく、腕を振り回す、隣で寝ている人を蹴飛ばすといった異常行動をレム睡眠中に引き起こします。60歳以上の高齢の男性に多く、最近はレビー小体型認知症やパーキンソン病への進行が問題視されています。

睡眠無呼吸外来とナルコレプシー外来の歩み

1998年、持続的気道陽圧法(CPAP(シーパップ))の保険適用が承認された日に、内科の特殊専門外来として睡眠無呼吸外来を設置しました。

その後、2000年に大学病院としては国内初の睡眠医療センター(写真1)を病院の中央診療部に開設し、2002年には睡眠専門外来(現在の睡眠科)の中に睡眠無呼吸外来(別名CPAPクリニック)とナルコレプシー外来が加わりました。

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写真1 睡眠医療センター内のモニター室(アテンドにて7床監視)

ナルコレプシー外来では、その診断法である反復睡眠潜時検査(MSLT)を睡眠医療センターで週6件施行しています。

現在は耳鼻咽喉科(じびいんこうか)(いびき外来)、歯科口腔外科(しかこうくうげか)とも連携し、小児から高齢者まであらゆる睡眠呼吸障害を診療できる体制を病院内で整えています。

国内初の起床困難・不登校外来で中高生を支援

2017年2月には、睡眠科の中に起床困難・不登校外来が新たに加わりました。中高生に好発するナルコレプシーに混じって、昼夜逆転生活に陥っている不登校の学生が増えてきたからです。当科では、睡眠医療センターに2床設置されたサーカディアンルーム(写真2)、または住宅用携帯ブルーライト照明器具(写真3)という画期的な光療法の併用により、多数の起床困難の不登校の学生を復学・進級・進学させています。

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写真2 サーカディアンルーム(新病院の7B病棟個室に2床設置)光による昼夜変化を意図的につくり、体のリズムを整えます
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写真3 住宅用携帯ブルーライト照明器具(起床困難者の在宅用)起床困難・不登校外来では、朝の爽やかな目覚めにブルーライトの光目覚まし時計を使用します

なお、起床困難・不登校外来を受診される方は、2週間以上記録した睡眠日誌(睡眠表)を必ず持参してください。

不眠症の非薬物療法として行う認知行動療法

不眠症で悩んでいるが睡眠薬はできるだけ飲みたくない、そんな方にお勧めなのが2010年10月に睡眠科に開設した不眠症向け認知行動療法(CBTI)の外来(担当:堀礼子医師)です。不眠症の悪循環を自分の力で改善できるようになることを目指します。

CBTIは通常、睡眠ポリグラフ検査を中心とした総合的睡眠検査を行い、ほかの睡眠障害が否定された後で行われます。CBTIは薬物療法と併用して行われることもありますが、不眠症の非薬物療法として、米国を中心に世界的には不眠症治療の主流になりつつあります。

更新:2022.03.14