成人のてんかん診療-関係診療科と連携し専門的治療を行う

愛知医科大学病院

てんかんセンター(成人)

愛知県長久手市岩作雁又

てんかん治療の一大拠点

当院てんかんセンターは、ここ15年ほど、愛知県内および岐阜・三重県の成人てんかん治療の一大拠点として機能しており、全国的にも認知されています。大学病院としての利点を生かし、脳血管障害・脳炎などが原因となる症候性のてんかんは神経内科に、一部のてんかんに対する外科的処置が必要な場合は脳神経外科に、いつでも紹介できる総合的な診療を行っています。数年前から小児科のてんかん専門医が診療を開始し、赤ちゃんから高齢者まで、あらゆるてんかんの相談を受けることができる体制が整いました。

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写真1 精神神経科外来処置室

月に1度、小児科、精神神経科、神経内科、脳神経外科、4科による合同カンファレンス(症例検討会)を行い、情報共有を図っています。また、MRI、SPECT、PETなど高度な画像機器や、長時間脳波ビデオモニターを用いて検査・診断を行っています。

現在、精神神経科に3人、小児科に2人のてんかん学会認定医が在籍し、専門的治療を行える体制を整えています。

成人のてんかん治療と当センターの意義

成人のてんかんの6~7割は正しい診断さえできれば、薬物療法でてんかん発作を抑制することが可能で、決して重篤な疾患ではありません。しかし、発作が抑制された方でも、運転の可否、結婚・出産、就労などに際して、しばしば専門的なアドバイスが大きな手助けになることがあり、こうした人生の節目などには専門医への受診が役に立つことがあります。運転は、最後の覚醒(かくせい)時に起こったてんかん発作から2年間が経過していることが必要であり、この条件を満たしている場合には、精神神経科で運転許可のための書類を提出するお手伝いが可能です。また結婚・出産には、妊娠に最も負荷が少なくかつ、最も効率良く発作を抑制できる薬剤を選ぶ必要があり、そのためには専門的な知識を用いたてんかんの正しい類型診断(てんかんの種類の診断)が必要となります。

てんかん発作が薬物療法で予防困難な残り3割の方においては、福祉手帳を取得し就労の訓練や斡旋(あっせん)をしている公的・私的機関への紹介、精神科的問題への対処、手術の可否について連携脳神経外科施設への紹介など、専門的な対応を行っています。てんかんで紹介・受診される方の約5人に1人が失神発作や心因性の発作などてんかん以外の病気であり、難しいケースは入院の上、発作脳波同時記録を行って鑑別診断を行っています。心因性発作に関しては、こころのケアセンターと連携しながら、その後の対処も含め、先進的な取り組みを行っています。

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写真2 脳波判読の様子
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写真3 脳波計

てんかんは1つの病気ではなく、さまざまな種類の病気の複合体であり、その形も千差万別です。「けいれんを起こして倒れる」というのが一般的なてんかんに対するイメージですが、「意識を失ってボーっとするだけ」の発作の方がむしろ割合は多いのです。

また、てんかんは子どもの病気という印象もありますが、50歳を過ぎると大幅に発生率が上昇します。特に高齢者に特徴的なのは、一点を凝視してから口なめずりをし、その後数分くらい生返事をする複雑部分発作と呼ばれるてんかん発作で、画像診断でも脳波でも異常が見つからず何年も放置されていることが少なくない発作です。放置していると次第に記憶力も低下し、認知症と間違われることもあります。これは認知症とは違って治る病気なので、できるだけ早い受診が望まれます。

成人のてんかんのことであれば、関係診療科と連携をとりながら、ほぼ全般にわたって診療を行うことができ、新しく汎用(はんよう)されるようになった新薬もいち早く試すことができる体制も整っています。セカンド・オピニオンも積極的に引き受けています。

更新:2022.03.14