あくせいりんぱしゅ

悪性リンパ腫

概要

血液の中を流れるリンパ球は、体内に入ってきた細菌やウイルスなどを攻撃する白血球の一種で、免疫力を保つための大切な役割を果たしています。悪性リンパ腫は、そのリンパ球ががん化する病気で、リンパ節やリンパ管、脾臓(ひぞう)や胸腺、扁桃腺(へんとうせん)などのリンパ系の組織で発生することが多くあります。またリンパ球は全身を巡っているため、消化管や肺、脳や皮膚などさまざまな部位に発生する可能性があります。

悪性リンパ腫は、がん細胞の形や性質などによって70以上もの種類に分類され、それぞれ症状の現れ方や進行の仕方などの特徴が異なりますが、大きく分けるとホジキンリンパ腫と非ホジキンリンパ腫の2種類に分類されます。前者は若年の患者さんが多く、より悪性度の高い後者は高齢の患者さんが多いとされています。

図
図:リンパ節・リンパ管の分布の様子

悪性リンパ腫の症状

悪性リンパ腫の初期症状としては、首や脇の下、足の付け根など、リンパ節の多い部分が腫れて、しこりに触れるようになります。しこりはほとんどの場合では痛みはなく、赤くもならないため、気づかずにいることが少なくありません。脇の下や首のリンパ節が腫れたときには放置しないで、早めに医療機関で受診することが大切です。

やがてリンパ球の流れに乗ってがんが全身に広がっていくと、38度以上の発熱や倦怠感(けんたいかん)、体重の減少やひどい寝汗といった症状が現れるようになります。また、悪性リンパ腫がほかの臓器に広がっていくことで、その臓器に関連した特有の症状が見られ、脊髄や脳であれば麻痺(まひ)や意識障害が、肺や気管であれば呼吸困難などが生じることがあります。

悪性リンパ腫の原因

悪性リンパ腫が発症する明確なメカニズムはまだ解明されていませんが、細胞内の特定の遺伝子が変異し、がん遺伝子を活性化させることが原因の一つと考えられています。数多くある悪性リンパ腫の種類によっては、ほかの病気によって免疫力が大きく落ちてしまうことで、リンパ球の中でがん細胞が過剰に増えてしまい、発症率が上昇することが分かっているものもあります。

また、ウイルスや細菌への感染が関係している可能性が高いという指摘もあります。悪性リンパ腫の発症に関わるウイルスとしては、エイズを引き起こすHIVウイルスや、胃がんの原因となるピロリ菌のほか、C型肝炎ウイルス、ヒトT細胞白血病ウイルスやEBウイルスなどが挙げられています。

悪性リンパ腫の検査・診断

症状などから悪性リンパ腫が疑われる場合には、腫れているリンパ節のしこりの部分を確かめるために触診を行います。その後、血液検査や、リンパ節を採取して行う病理検査や骨髄検査などを行って診断を確定させるとともに、CTやMRIの画像検査でほかの部位への広がりの度合いなどを調べます。

血液検査

血液中の白血球やリンパ球の数に異常がないかを調べるほか、全身の状態を知るために血液検査を行います。また、発熱や体重の減少、ひどい倦怠感などの全身症状が見られる場合には、ほかの感染症によるものかどうかの判断を行う必要もあります。血液検査のほかに尿検査なども行って、体の中に起こっている炎症について詳しく調べます。

病理検査

悪性リンパ腫の確定診断のために行います。リンパ節や消化管などにできたしこりの一部を採取して顕微鏡で詳しく見ながら、がん細胞があるかどうかを調べます。がん細胞が確認されれば悪性リンパ腫と確定診断されます。また、骨髄にがん細胞が広がっているかを調べるために、腰骨や胸骨から骨髄を採取して顕微鏡で調べる骨髄検査を行うこともあります。

画像検査(超音波検査、CT検査、MRI検査)

リンパ節の腫れの程度やしこりの大きさ、周囲への臓器や器官への影響の度合いを調べるために、超音波検査やCT検査、MRI検査などの画像検査を行います。近年では、初期段階で悪性リンパ腫の有無を判断できるPET検査が行われることも増えています。

悪性リンパ腫の治療

悪性リンパ腫の主な治療法は、抗がん剤治療と放射線治療になります。リンパ節は全身に分布しているため、腫れているリンパ節を手術で切除するだけでは治癒しません。従って、悪性リンパ腫の治療で手術が行われることは一般的にはありません。

がんが全身に広がっていない初期の段階では放射線治療を行い、リンパ節を通して広がった場合には抗がん剤や分子標的治療薬(ぶんしひょうてきちりょうやく)を用いた化学療法が選択されます。悪性リンパ腫は全身に広がりやすいがんのため、全身に行き渡らせることができる薬剤を使う治療は効果が高いとされており、広がりの度合いによっては放射線治療を併せて行うこともあります。

なお、悪性リンパ腫の種類によっては非常にゆっくりと進行するものもあります。自覚できる症状が何年もなく、しこりの大きさも変わらないような場合には、治療をせずに慎重に経過を見ていくこともあります。

更新:2025.01.30

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