進化している冠動脈の治療

浜松医科大学医学部附属病院

循環器内科

静岡県浜松市東区半田山

あなたの冠動脈は大丈夫ですか?

冠動脈(かんどうみゃく)とは、心臓を動かすために必要な血液が流れている心臓表面の血管で、大きさ3㎜程度です。

その血管がコレステロールの塊かたまりなどで、徐々に狭くなってくる状態を狭心症(きょうしんしょう)(慢性冠症候群(まんせいかんしょうこうぐん))と呼び、血栓(けっせん)などが急に詰まる状態を、急性心筋梗塞(きゅうせいしんきんこうそく)(急性冠症候群)と呼んでいます。血管の断面の半分以上狭くなると、症状が出てきます。

症状はさまざまで、典型的には体を動かした際の胸痛(きょうつう)ですが、息切れや肩の痛みを訴える方もいます。また糖尿病、高齢者の場合には、症状がないこともあります。急性心筋梗塞は発症すると、病院へたどり着いても1割弱の方が亡くなる危険な病気です。

発症前に狭心症の症状が出る方が多くいます。気になった場合は、早めに冠動脈の検査を受けることで、心筋梗塞へ移行する危険を減らすことができます。

技術の進歩で体に負担が少ない治療が可能

運動負荷心電図、心臓CTなどの検査で狭心症の疑いがあれば、冠動脈造影検査を行います。狭窄(きょうさく)していた場合、飲み薬が必要です。抗血小板薬(こうけっしょうばんやく)という、血液をサラサラにする薬剤です。

ほかに、コレステロールや血圧を下げる薬も飲んでもらうことが多いです。通常の内服薬で不十分な場合は注射製剤もあり、しっかりと下げることが可能です。

薬だけでは症状や血液の流れが改善しない場合は、血管を広げる治療(カテーテル治療)か、狭窄している部分の先に自分の足や胸にある血管をつなげる、バイパス手術があります。

カテーテル治療の歴史は古く、40年以上前から行われています。当初は風船で血管を広げるのみでしたが、現在はステントという金属製の筒を使うことがほとんどです。

ステントには薬剤が塗ってあり、再び血管が狭くなることを予防しています。手首の血管からカテーテル治療を行うことが多く、終わった後すぐに歩くことが可能になりました。1、2時間で終了し、2泊3日程度の入院です。正確なステント留置のために、血管の内部を詳細に観察することができるようになっています(図)。

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図 分岐部へのステント留置後3D-OCT 画像
左:ステントの網目が確認できます。ガイドワイヤー(白矢印)、冠動脈の枝の入口(黄矢印)
右:冠動脈の断面。血管がステント(白矢印)で拡張し円状に拡張している様子

ステントをはじめとした医療機器、治療技術、薬剤の進化で、冠動脈疾患へのカテーテル治療は、今まで以上に進化しています。バイパス手術が必要かどうかは、外科医と相談して決めています。

更新:2023.10.26