膀胱がんに対するロボット支援膀胱全摘除+腔内尿路変更術

藤田医科大学病院

泌尿器科

愛知県豊明市沓掛町町田楽ヶ窪

膀胱がんとは

膀胱(ぼうこう)がんは尿を溜める膀胱に発生するがんで、血尿を自覚して発見されることが多い病気です。国内の推定患者数は年間約2万人を超え、特に男性、喫煙者に発症する傾向が高いがんです。近年では高齢化に伴い、中高年の女性の患者さんも多くいます。膀胱がんは多発し、治療後にも再発しやすいことが特徴です。

膀胱がんは腫瘍(しゅよう)の深達度(根っこの深さ)が予後や治療方法に大きく影響します。浅い層である粘膜まででしたら内視鏡手術で対応可能ですが、筋層まで腫瘍が浸潤(しんじゅん)している場合は膀胱全摘除+尿路変更術が標準治療となります。

ロボット支援手術の特徴

近年、さまざまな手術治療に手術支援ロボットである“ダビンチ”が導入され、その有用性が報告されています。藤田医科大学では2009年よりロボット支援手術を開始し、同年、泌尿器科でも前立腺がんに対するロボット支援前立腺全摘除術を施行しました。2019年までに全体で1500例以上を実施しています。

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写真1:ロボット支援手術の手術室内術者は奥に見えるコンソールで手術操作を施行します

ロボット支援手術は皮膚に孔(あな)を開けるだけで施行でき、大きな傷がないため術後の痛みや出血量が少なく、入院期間も短期間で退院し、早期に社会復帰が可能となります。また、緻密な操作が可能であり、術後の機能改善(尿漏れ改善など)のメリットも報告されています。

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写真2:ロボット支援膀胱全摘除術後の腹部所見(男性)手術創は膀胱を摘出した3cm程度の臍上の傷と手術操作のためのポート孔のみです

ロボット支援膀胱全摘除のメリット

筋層まで腫瘍が浸潤している膀胱がんに対する標準治療は膀胱全摘除術ですが、開腹での手術は大きな切開を要し、出血量や合併症も多く非常に侵襲性(しんしゅうせい)(体への負担)の高い術式です。そのため、高齢者や臓器機能に問題のある患者さんには敬遠され、根治率(こんちりつ)の低い抗がん剤や放射線療法を選択されることもあります。その点、ロボット支援膀胱全摘除術であれば、高リスクの患者さんにも安心して手術での根治を提示できます。

当科では2011年よりロボット支援膀胱全摘除を開始し、現在までに50例を施行し、これは国内トップクラスです。その間、開腹手術への移行例や大きな合併症もなく施行できています。2018年には、ダビンチによるロボット支援膀胱全摘除術が保険適用となりました。

ロボット支援膀胱全摘除+腔内尿路変更術

膀胱全摘除を施行する場合、必ず尿路変更術(一般には腸管を用いた)を同時に行う必要があります。その場合、多くの施設では一旦開腹して膀胱を摘除し、その傷から腸管を取り出し開腹創下での尿路変更術を施行しています。しかしそれでは、ロボット支援手術における低侵襲性が損なわれ、腸管機能の回復や傷の痛みなどといった機能回復に時間を要します。

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図:膀胱全摘除術後の尿路変更術式

その点、私たちは当初より尿路変更を開腹せず、すべての手術操作を腔内(くうない)で施行しており、出血量や合併症の減少、術後の腸管機能回復の早期化が認められています。事実、ロボット支援膀胱全摘除+腔内尿路変更術の導入前後では、術後の合併症も減少し入院期間も短縮しています。

多職種スタッフでの患者サポート

ロボット支援膀胱全摘除+腔内尿路変更術は手術時間も長く(4~8時間)、術後の排尿ケアなど、患者さんにとっては初めて経験することが山のようにあります。医師だけでなく、看護師、薬剤師、理学療法士などが術前・術後にさまざまなツールを用いて説明し、患者さんの不安を軽減できるよう指導するなど、多職種のスタッフによる患者さんへのサポートも重要事項として取り組んでいます。

更新:2024.10.09

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