難治性疼痛の最新治療 脊髄刺激療法とは?

札幌医科大学附属病院

麻酔科

北海道札幌市中央区

難治性疼痛とは?

難治性疼痛とは、さまざまな原因により痛みが持続する病態です。麻酔科ペインクリニック外来では、患者さんの痛みの症状に応じて、薬物療法や神経ブロックによる治療を行っています。難治性疼痛の詳しい原因はわかっていないため、薬物療法や神経ブロックでは十分な治療効果を得ることが難しい患者さんもいます。そのような患者さんに対して、難治性疼痛の最新治療である脊髄(せきずい)刺激療法を行っています。

難治性疼痛とはどんな病気?

難治性疼痛とは、さまざまな原因により痛みが持続する病態です。患者さんの痛みの症状に応じて、薬物療法や神経ブロックによる治療を行います。薬物療法では、解熱鎮痛剤以外にも抗てんかん薬や、抗うつ薬を治療目的に使用する場合があります。

また、痛みが強い患者さんには薬の量や使用期間について約束をしたうえで、医療用麻薬を使用する場合もあります。神経の異常な興奮が痛みの原因となっている患者さんには神経ブロックを行います。神経ブロックには神経の異常な興奮を抑える局所麻酔薬や、神経の炎症を抑えるステロイドを使用します。

残念ながら、難治性疼痛の詳しい原因はわかっていないため、薬物療法や神経ブロックでは十分な治療効果が得られない患者さんもいます。

脊髄刺激療法はどんな治療法?

脊髄刺激療法は背骨の中の硬膜外腔(こうまくがいくう)という場所に細い電極を留置して、脊髄を刺激することにより痛みを和らげる治療法です。私たち麻酔科医が手術を受ける患者さんに対して行う、硬膜外麻酔という処置を応用しています。

脊髄刺激療法は難治性疼痛のなかでも、神経障害性疼痛、虚血性(きょけつせい)疼痛(閉塞性動脈硬化症(へいそくせいどうみゃくこうかしょう)など)、脊椎(せきつい)手術後症候群、有痛性糖尿病性末梢神経障害による痛みに対して治療効果が高いと報告されています。

脊髄刺激療法はどう行うの?

脊髄刺激療法は、硬膜外腔に留置する電極の位置を調整する必要があるため、X線透視下に行います(図1)。

イラスト
図1 脊髄刺激療法の様子

患者さんにうつ伏せになってもらい、X線で背骨を確認しながら注射をして、硬膜外腔に電極を留置します(図2)。電極からの電気刺激により、痛みのある箇所に刺激が加わることを確認します。1週間程度の試験期間(トライアル期間)で脊髄刺激療法の治療効果を評価して、痛みが半分から3分の1程度に軽減されていれば有効と判断します。

図
図2 脊髄刺激装置と電極の模式図

脊髄刺激療法が痛みに有効だった患者さんには、ジェネレータ(充電式電池)を体に植え込みます。脊髄刺激療法についてイメージしづらい場合は、不整脈のある患者さんが体内に植え込んでいるペースメーカーを想像してください。

脊髄刺激療法により難治性疼痛の痛みが和らぐことで、日常生活動作の改善や生活の質の向上が期待できます。さらには服用していた鎮痛薬を減らすことで、薬の副作用を減らせる可能性があります。

脊髄刺激療法を受けた後はどうなるの?

脊髄刺激療法を受けた後は患者さん自身がプログラマを使用して、電極の刺激強度・頻度(ひんど)を調整します。患者さんの生活スタイルに合わせたプログラムの設定が可能で、痛みの変化に合わせて、患者さん自身で刺激の調整をすることが可能です。脊髄刺激療法により痛みが和らぐことで、痛みに対して服用していた薬の量を減らすことが可能となり、薬の副作用が減ることが期待できます。

脊髄刺激療法は体の中に電極、ジェネレータといった金属を植え込む治療になるため、一部の医療機器の使用に注意が必要な場合があります。

更新:2024.09.23

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