最新医療を駆使した小児脊柱変形手術
山梨大学医学部附属病院
整形外科
山梨県中央市下河東

側弯症(そくわんしょう)とは?
側弯症とは、脊柱(せきちゅう)(背骨)が弯曲した状態をいいます。発症する時期によって、乳児期側弯症、学童期側弯症、思春期側弯症に分類されます。

欧米では乳児期の発症が多いのですが、日本では乳児期側弯症は少なく、思春期側弯症が最も多いです。そのため思春期側弯症は、特発性側弯症とほぼ同じように扱われています。特発性側弯症は、成長とともに発症し進行する原因不明の疾患です。これまでに、側弯症の原因と姿勢や日常生活動作(物の持ち方など)は無関係であることが、いくつかの研究で示されています。
側弯症の症状は?
側弯変形は、前後左右への曲がりやねじれもある、3次元的な脊柱変形です。弯曲の程度を示す指標は、X線正面像でのコブ角(Cobb角、図1)であり、10度以上が側弯とされています。10度以上の発生頻度は2%で、そのうち25度以上が0.3%です。

原因については多くの仮説が唱えられていますが、実証されたものはありません。特発性側弯症についても、女児に多く、体型的にはほっそりした華奢な体の子が多いため、性ホルモンや筋肉量と関係しているという説もありましたが、結局よくわかっていないのが現状です。
日本では、原因別では原因不明の特発性側弯症が8割を占めますが、そのうち8割は女性です。思春期側弯症は第2次成長期、すなわち女児では小学生後半から中学生にかけての成長期、特に初潮前後に、急速に側弯が悪化します。
主な症状は、体幹の形態異常です。脊椎(せきつい)および肋骨(ろっこつ)の回旋(かいせん)(ねじれ)のため、背中では非対称の隆起(ハンプ〈Hump〉といいます)ができ、これは立った状態で前屈をするとはっきり現れます。またウエストラインが非対称となり、片側はへこみが消え、反対側はへこみが深くなります。肩のバランスが失われて、片方の肩が上がった状態になることもあります(図2)。

高度の胸椎側弯(きょうついそくわん)では呼吸機能が障害されることもあり、運動動作時などに息切れなどが出現することもあります。高度の側弯では、ハンプ周囲、首から肩、腰の痛みが強くなり、とくに成人になってから、変形性脊椎症の進行とともに強い疼痛(とうつう)(痛み)が生じることがあります。
側弯症の治療は?
成長の程度やX線による検査で決定します。カーブが強くなく、身長が伸びている場合は、装具療法を行います。装具療法が効果のない方もあり、特発性側弯症ではコブ角が40〜50度で、手術を選択肢に入れて検討します。
なお、整体やカイロプラクティックが側弯症の改善につながるという医学的な根拠は確認されていません。
側弯症の手術
背中側を切開し、椎骨(ついこつ)の後方に椎弓根(ついきゅうこん)スクリューという金属を挿入して、変形を矯正する手術を行います。椎弓根スクリューによる変形矯正は、背中の筋肉を広く開いた状態で手術を行っていた従来の方法に比べ、良好な矯正が可能です。
当院では、脊椎・脊髄(せきずい)など、難易度の高い手術も完全に行え、手術中も使用可能なCT装置を導入して、正確に椎弓根スクリューを挿入できるように安全対策をとっています。また、手術中は常に脊髄に電気を流し、脊髄神経の障害が起きていないかをリアルタイムに確認できる脊髄モニタリングも行っており、手術治療の安全性はかなり高くなっています(写真)。

更新:2024.04.26