消化管がん(大腸・胃・食道)に対する内視鏡治療

山梨大学医学部附属病院

消化器内科

山梨県中央市下河東

消化管がんとは?

消化管のがんは、すべてのがんの3割強を占めており、がんの発症が多い部位は、大腸・胃・食道です。大腸では、大腸ポリプの多くを占める腺腫(せんしゅ)から、がんに移行するものが多いとされています。また、胃はピロリ菌感染、食道は飲酒・喫煙との関連が強いことがわかっています。がんの中でも粘膜にとどまる早期がんは、内視鏡治療の適応となります。早期発見されることで、外科手術に比べて体への負担が少ない、内視鏡治療で治癒する可能性があります。

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飲酒・喫煙、ピロリ菌感染など、がんのリスクが高いと思われる場合は、定期的に内視鏡検査を受けることが勧められます。

大腸ポリープは切除したほうがいいの?

大腸に発生するポリープで多いものが、「腺腫」と呼ばれるものです。腺腫はがん化するリスクがあり、大きくなればなるほどそのリスクが高くなるため、6mm以上のものは切除が望ましいと考えられています。

精密検査に使用する拡大鏡で表面の模様を確認することで、ある程度の診断は可能ですが、最終的にがんであるかどうかは実際に切除したうえで、病理検査での診断が必要です。

最近では、小さいものも含めてポリープをすべて切除してしまったほうが、その後の定期検査の頻度を減らすことができるとの報告もあります。

内視鏡治療にはどんなものがあるの?

消化管の壁は層構造になっており、腺腫やがんは一番内側の粘膜から発生します(図1)。これらを内視鏡的にとる方法として、主に以下の3つが用いられています。

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図1 消化管壁の層構造

まずは内視鏡的粘膜切除術(ないしきょうてきねんまくせつじょじゅつ)(EMR:endoscopic mucosal resection)です(図2)。これは粘膜下層に生理食塩水を注入した後、スネアと呼ばれる金属製の輪をかけて通電することで切除する方法です。治療後の合併症として、傷口からの出血や穿孔(せんこう)(腸の壁に穴があく)があります。

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図2 内視鏡的粘膜切除術(EMR)

似た方法に、コールドスネアポリペクトミー(CSP:cold snare polypectomy)という方法があります。これは比較的小さいポリープに使用され、粘膜下層に液体を注入せず、スネアを用いて、通電せずに、そのままちぎる方法です。EMRよりも出血のリスクが少なく、液体を注入する手間がないため、1回の検査でより多くのポリープをとることができます。複数病変がある患者さんのポリープを、すべてとることも可能です。

また20mmを超える大きな病変や、がんと考えられるような病変については、内視鏡的粘膜下層剥離術(ないしきょうてきねんまくかそうはくりじゅつ)(ESD:endoscopic submucosal dissection)が行 われます(図3)。生理食塩水を注入後、電気メスで剥がしていく方法です。スネアに入りきらないような大きい病変でも、まるごときれいにとれるのが利点です。EMRとCSPは外来で可能ですが、ESDは入院が必要となります。

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図3 内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)

内視鏡治療の適応について

ESDは大腸だけでなく、食道や胃についても行われます。ただし、どんな病変にも適応になるというわけではありません。

がんは早期がんと進行がんに分けられます。がんは粘膜から発生し、進行に伴い、粘膜→粘膜下層→筋層と壁深くに入り込んでいきます(図4)。粘膜下層までの病変を早期がんといい、筋層に及ぶ病変を進行がんと呼びます。内視鏡治療の適応となるには、まず早期がんの段階でなくてはなりません。粘膜にとどまる病変は、内視鏡治療のよい適応です。

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図4 早期がんと進行がん

粘膜下層に及ぶ病変の場合、適応となるものとならないものがあります。粘膜下層までの病変の中でも、より深くまで到達している病変は、近くのリンパ節にも転移している可能性があり、外科手術の適応となります。治療前の精密検査で、粘膜下層に及んでいるかどうか、及んでいる場合、内視鏡治療がよいか外科手術がよいか判断し、治療法を選択することになります。

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写真 内視鏡検査の様子

判断が難しい場合は、まず体への負担が少ない内視鏡治療を行い、切除した病変を詳しくみることで、追加の外科手術が必要か検討することもあります。

更新:2024.04.26