小児の睡眠障害を理解する

山梨大学医学部附属病院

小児科

山梨県中央市下河東

睡眠障害とは?

睡眠障害とは、睡眠の質・量の障害により日常生活が妨げられる病気の総称です。睡眠障害には不眠症、過眠症、睡眠時無呼吸症候群(すいみんじむこきゅうしょうこうぐん)など、多種多様な病気が含まれます。

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成人(社会人)の睡眠障害で最も多いのは不眠ですが、小児では年齢によって、睡眠時無呼吸症候群や概日(がいじつ)リズム睡眠障害、過眠症などがあります。

小児の睡眠時無呼吸

睡眠中のいびきや歯ぎしり、昼間の眠気やイライラが強い場合は、閉塞性睡眠時無呼吸症候群(へいそくせいすいみんじむこきゅうしょうこうぐん)を疑います。

幼児〜学童では、リンパ組織である扁桃(へんとう)とアデノイド(図1)が生理的に腫大(しゅだい)(大きくなる)し、寝ている間の呼吸の妨げになることがあります。寝ている間の呼吸が弱くなり、夜間に何度も起きてしまうため睡眠の質が悪くなり、寝ても眠気が解消されなくなり、昼間の眠気につながります。また、慢性的な睡眠不足状態に陥るため、常にイライラしたり怒りっぽくなったりします。

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図1 扁桃とアデノイド

扁桃とアデノイドは成長とともに自然に小さくなりますが、その前に治療が必要な場合は、手術により取り除く必要があります。当院では小児科と頭頸部(とうけいぶ)・耳鼻咽喉科とで協力して、睡眠時無呼吸の患者さんの治療を行っています。

社会のリズムと体のリズムのずれ

近年になり、日本の社会全体がどんどん夜型化しています。子どもたちの日常もこれに合わせて夜型化しています。学校以外にも習い事、塾、スマートフォンなどデジタルデバイスの使用等、さまざまな理由で寝る時間が遅くなっています。

しかし学校があるため、夜寝る時間が遅くなっても、朝起きる時間は変わりません。その結果、慢性的な睡眠不足に陥り、これを解消するために土日などに遅くまで寝てしまいます。

こういった生活を続けていると、徐々に体内時計(概日リズムといいます)が狂ってしまいます。これを睡眠相後退型概日(すいみんそうこうたいがたがいじつ)リズム睡眠障害といいます。この状態になると、朝学校に行くために起きたくても、頭痛や吐き気、だるさ等で起きられず、登校も難しい状態に陥ります。

概日リズム睡眠障害の治療には規則正しい生活も大切ですが、それではなかなかよくならず、薬が必要になる場合が多いです。当院ではこういった患者さんの状態に合わせた指導と、子どもでも安全に使える内服薬での治療を心がけています(図2)。

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図2 睡眠リズムがわかりやすい睡眠表
(多摩北部医療センター小児科ホームページ、https://www.tmhp.jp/tamahoku/section/department/pediatrics/のデータをもとに、記入例を作成)

「やる気がない」と決めつけないで

過眠症という病気があります。本人の意思とは関係なく、昼間強い眠気にさらされて居眠りしてしまう病気です。この眠気は夜しっかり寝ても解消されず、また抗うことが難しいほど強いため、授業中のみならず、テスト中やゲームで遊んでいるときなどでも寝てしまいます。しかし、はた目には「居眠りしている」結果しか見えないため、「不真面目だ」「やる気がない」と言われてしまうことが多いです。

病気のせいで寝てしまうのに、何度も周りに同じことを言われることにより自信をなくし、学校に通うことがつらくなってしまい、不登校になる過眠症の子どもたちが多くなっています。過眠症は今なお認知度が低く、親や学校も気づかず、激励のつもりで患者さんを追い込んでしまうことがあります。

過眠症の診断には専用の検査がありますので、お子さんが過眠症かもしれないと思ったら、ご相談ください。

更新:2024.04.26