安全・安心な医療の実現をサポート

山梨大学医学部附属病院

医療の質・ 安全管理部

山梨県中央市下河東

高度な安全管理体制

当院は、山梨県内唯一の特定機能病院として、数多くの先進的な医療とともに高難度な治療を提供しています。特定機能病院は、医療技術の開発のみならず、その提供体制において高度な安全管理体制を維持する社会的責務があります(図1)。

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図1 特定機能病院に求められる役割

当院では、2001年に安全管理部門を設置し、その後、安全管理だけでなく医療の質の向上と改善の取り組みを行うため、「医療の質・安全管理部」と部署名を変更しています。現在、医療安全管理を担う副病院長のもと、医師、看護師、薬剤師、事務員で構成された専従職員が、ともに活動を行っています。

医療の安全を守る仕組み

医療の安全を守るためのシステムは、大きく分けて3つの枠組みで構成されています。

第1は予防です。医療者一人ひとりが細心の注意を払うなど、個々の努力に頼るだけでなく、ルールを徹底して病院内にシステムを構築することが重要です。例えば、外来や病棟では、患者さんに何度も名前と誕生日を声に出してもらいますが、これも取り違えを予防するための病院システムの1つです。

第2は、発生した有害事象への対応です。医薬品の副作用や合併症などの有害事象の発生は、最善を尽くしても決してゼロになりません。そのため、そうした被害を最小化し、可能であれば回復できるよう病院全体で取り組んでいます。

第3は、安全文化の醸成です。安全文化とは、組織が自ら安全を最優先する考え方と振る舞いを意味します。すべての医療者が安全文化に根差した医療の実践ができるように、研修の場の提供や安全情報を共有する仕組みの整備など、安全文化の醸成に取り組んでいます。

このように、3つのシステムを通じて、安全な医療の実現を病院全体でめざしています。

患者さんとともに創る安全

医療の安全は、医療者の努力に加えて、患者さんや家族の皆さんの参加で守られています。本人確認の際に患者さんに名前と誕生日を声に出していただきますが、医療者のみで確認する場合に比べて、間違いを減らす効果があることが知られています(図2)。

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図2 患者さんの確認のため、病院職員がお名前と誕生日をお尋ねします

また、入院時には、手首に装着するネームバンドを患者さんにつけていただき(写真1)、患者さんのネームバンドと薬剤等のバーコードを照合することで、間違いを未然に防いでいます。

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写真1 ネームバンド

入院中の患者さんのケガを防止することも、医療の安全における重要なテーマです。中でも歩行中の転倒やベッドからの転落は、骨折などの重大な結果につながる危険性があるため、入院中の転倒・転落を防止する活動を積極的に展開しています。廊下でぶつかって転倒するのを防止するため、患者さんや家族の皆さんに、廊下の左側通行へのご協力をお願いしています(図3)。

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図3 左側通行の掲示

また、武田信玄公をモチーフにしたキャラクターが登場する転倒・転落防止のパンフレットを作成し、患者さんや家族の皆さんで取り組んでいただける、転倒・転落防止対策をご紹介しています。

安心できる医療の実現

患者さんや家族の皆さんに、安全な医療とともに安心を提供することをめざしています。当院では、「すべての患者さんに安心を」を理念として、皆さんに安心を実感していただけるよう活動しています。患者中心で質の高い安全な医療の提供を審査する、公益財団法人日本医療機能評価機構による「病院機能評価」の認証もそれらの対策の1つであり、当院は、特定機能病院を対象とする厳しい基準である「一般病院3」の認証を受けています(写真2)。

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写真2 病院機能評価の認定証

また、患者さんや家族の皆さんからの声を改善活動に活かしています。投書箱や患者相談窓口を通じて集まる貴重なご意見やご提案を、患者サービス部門と協力しながら院内で共有し、病院全体が安心を実感できる場となるよう取り組んでいます。

遺伝子治療やロボット支援手術など、大学病院が誇る先進的医療を充実させることも重要です。山梨県内で安心して先進的な医療を受けていただけるように、医療技術の確実性と安全性について自ら審査を行い、さらに実施後もモニタリングを継続して安全性を追究し、安心をお届けしています。

すべての患者さんに安心を

当院の理念である「すべての患者さんに安心を」を実現するため、これまで述べてきた「安全な医療」を筆頭に、「親身な笑顔」「先進的技術」「一つのチーム」としての取り組みを行っています。

「親身な笑顔」は、患者さんや家族の皆さんに安心をお届けするための、医療者のふるまいです。笑顔はもちろん、礼節を重んじて患者さんの尊厳と自己決定を最大限、尊重できる医療者の育成が、私たちの使命です。

「先進的技術」は、大学病院に期待される重要な役割の1つです。先進的医療技術の安全性の審査など、安全性の追究に加えて、医療の質を高めていくため、院内資格制度を創設して医療者の能力向上を図っています。

「一つのチーム」は、全職員が所持する「医療スタッフマニュアル」にも記載されている、当院のモットーです。病院全体が一つのチームとなり、患者さんと家族の皆さんに安全で安心な医療を実感していただけるように、チーム医療に関する学習会などの取り組みを行っています。

こうした数々の取り組みを通じて、すべての患者さんに安心をお届けしていくことが、医療の質・安全管理部に期待された役割であり、願いです。

更新:2024.04.26