できるだけ早期が重要! 最新の脳梗塞治療 ―急性期再開通療法―

山梨大学医学部附属病院

脳神経外科

山梨県中央市下河東

脳梗塞(のうこうそく)とは?

脳卒中(のうそっちゅう)には、血管が破れて起こる脳内出血やくも膜下出血(まくかしゅっけつ)と、血管が詰まって発症する脳梗塞とがあります(図1)。脳梗塞とは、脳に栄養を送る働きをしている血管が詰まり、脳の一部が死んでしまう病気です。日本では食生活の欧米化や超高齢化に伴い、発症率が年々増加し、脳卒中の主役となっています。

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図1 脳卒中の種類

症状は、どの部位の脳が障害されるかで変わってきますが、言葉がうまく話せない、理解できないなどの言語障害、あるいは手足が動かない、歩けないなどの運動障害をきたし、要介護状態の原因となります。

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脳梗塞の原因と予防法

脳梗塞には、血管自体が細くなって詰まるもの(ラクナ梗塞とアテローム血栓性脳梗塞(けっせんせいのうこうそく))と、心臓にできた血の塊(血栓)が流れてきて脳の血管が詰まるもの(心原性脳塞栓症(しんげんせいのうそくせんしょう))があります。

血管が細くなる最大の原因は、高血圧と動脈硬化(どうみゃくこうか)です。喫煙や運動不足、偏った食生活などの生活習慣が、それらを促進します。また、生活習慣病である脂質異常症や糖尿病も、重要な危険因子となります。

動脈硬化に対する予防として、日ごろの食事や喫煙などの生活習慣を見直すことや、血圧・血糖値などの管理が重要です。

一方、心臓に血栓ができる原因としては、心房細動(しんぼうさいどう)などの不整脈や弁膜症があげられ、必要があれば、血栓に対する予防薬を内服します。

急性期再開通療法:血栓溶解療法

脳の血管が詰まると、脳は時間が経過するほどに傷害を受け、ついには細胞が死んでしまい(壊死(えし))、元に戻らなくなる、それが脳梗塞です。そこで、脳の細胞が死んでしまう前に、詰まっている血の塊(血栓)を溶かし、血流を再開させ、脳の働きを取り戻そうというのが、血栓溶解療法です。

t-PAという血栓を溶かす薬を点滴し、血管が詰まって間もないうちに血流を回復させれば、症状も軽く済みます。脳梗塞が完成してしまう4、5時間以内であれば治療可能で、現在標準的な治療として広く行われています。

急性期再開通療法:血栓回収療法

血栓溶解療法による治療が適さない、または効果がなかった場合、血栓回収療法を検討します。血栓回収療法は、ステントという細いワイヤーの先端に金属製の小さな網目状の筒が取り付けられた治療機器を使い(写真1)、血管の中から血栓の回収を行います。

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写真1 ステント(血栓回収器具)(画像提供:Stryker Japan K.K.)

方法としては、足の付け根の血管から、マイクロカテーテルと呼ばれる細い管を血管の中に通して、脳内の血栓が詰まった部位まで到達させます。その後、ステントをマイクロカテーテルの中を通して血管の中に展開し、血栓を捕らえて体外へと除去します(図2)。血管の中から血栓を取り除き、脳への血流を回復させます(写真2、3)。

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図2 血栓回収療法のイメージ(画像提供:Stryker Japan K.K.)
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写真2 血栓回収療法の血管撮影像
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写真3 回収された血栓

この方法により、以前は脳梗塞になるのを待つしかなかった例でも、完全に回復する可能性がでてきました。この治療は、早ければ早いほど効果が高いので、脳梗塞と思われる症状(図3)が出たら、すぐに医療機関を受診する必要があります。

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図3 脳梗塞の症状の例

更新:2024.04.26