がん治療に伴う感染対策

四国がんセンター

感染症・腫瘍内科

愛媛県松山市南梅本町甲

がん治療で起こりうる問題の1つに感染症があります

すべてのヒトの体には、細菌、真菌、ウイルスといった病原菌から体を守るためのしくみ、免疫機能が備わっています。免疫機能は皮膚・粘膜のバリア機能、好中球などが菌を貪食(どんしょく)する自然免疫、病原菌に特異的な免疫をつくり攻撃する獲得免疫に分類され、互いに補いつつ病原菌から体を守っています。

がんの治療はこの免疫機能のいくつかに障害を与えてしまうため、治療中はさまざまな感染症が起こる危険性があります(図)。どの免疫機能が障害を受けたかによって、起こる感染症に違いがあり、感染症対策はがん治療において避けることのできない大切な問題です。

イラスト
図 体の免疫機能と、障害を受けたときに起こる感染症

当院には感染症を主に診療する感染症・腫瘍(しゅよう)内科があり、がん治療に伴う各種感染について専門的立場から診断や治療方針の提案を行っています。また院内感染制御チームと連携し、病院全体のさまざまな感染防止活動を行っています。

適切な抗菌薬を提案し感染症対策に努めています

感染症の治療薬(抗菌薬)の世界的な乱用により抗菌薬の効かない菌(薬剤耐性菌)が増えている一方で、抗菌薬の開発に限界があり、新規の薬剤が開発されていないという現状があります。そのため適切に抗菌薬を使用して薬剤耐性菌の増加を防ぎ、抗菌薬の効果を将来にわたって維持するための対策がすべての医療施設で求められています。

適切に抗菌薬を使用するためには原因菌が何かを知り、菌の特性をもとに治療法を考える必要があります。当院では感染症専門医、感染管理認定看護師、感染制御専門薬剤師、細菌検査技師がカンファレンスを毎朝開き、病院で検出されたすべての菌の動向を確認しています。原因菌と効果のある抗菌薬が分かった時点で、直ちに各診療科の先生に連絡し抗菌薬の変更、調整をしてもらうよう提案しています。また院内全体の菌のデータをもとに、原因菌と効果のある薬剤の一覧表(アンチバイオグラム)を作成し電子カルテで参照できるように工夫し、薬剤耐性菌についても検出頻度(ひんど)や菌の同一性を検討し、その動向を確認しています。

当院で皆さんが安心してがん治療を行えるよう、これからも感染症対策に努めていきます。

更新:2022.03.08