インプラントを埋め込んで、聞こえを取り戻すー人工内耳の仕組み
耳鼻いんこう科
人工内耳とは?
音の振動は鼓膜から耳小骨(じしょうこつ)を経て、内耳の蝸牛(かぎゅう)へと伝わります。蝸牛には有毛細胞(ゆうもうさいぼう)が数千個並んでいて、音が伝わるとそれぞれの周波数に対応した有毛細胞が振動します。有毛細胞は音の振動を電気信号に変換する働きをしており、有毛細胞で変換された信号は、聴神経を経て脳に伝えられます。
人工内耳(じんこうないじ)はインプラント(体内機器)とプロセッサ(体外機器)で構成されており(図)、手術でインプラントを埋め込み、インプラントから出ている電極を蝸牛内に挿入します。プロセッサにはマイクが内蔵されており、マイクで拾った音はプロセッサで信号処理され、インプラントへと送られます。人工内耳により、音の信号を電気信号へと変換して聴神経を直接刺激することで、有毛細胞の機能を代替して、聴力を獲得することができます。
人工内耳は、聴覚障害があり、補聴器での装用(*1)効果が不十分である方に対する唯一の聴覚獲得法です。
*1 装用:装着して使用すること
人工内耳の適応は?
人工内耳の適応基準は、成人と小児で少し異なります。
成人では、高度難聴(聴力レベルが70〜89dBHL(*2))の方で、補聴器を使用しても十分な聞こえが得られない方や、重度難聴(聴力レベルが90dBHL以上)の方が対象となります。
*2 dBHL(デシベル・エイチ・エル):難聴の程度(聴力レベル)を表す単位。聴力レベルとは、その人が聞くことができる一番小さい音の大きさをいいます。
人工内耳の聞こえ方
人工内耳の手術を受けて1〜2週間後に、プロセッサ(体外装置)を装着して、初めて聞こえるようになります。
人工内耳から聞こえる音は「金属が鳴っているような音」あるいは「ロボットがしゃべっているような音」に聞こえることが多いようです。人工内耳を使用することで、多くの方が1対1での日常会話が可能となりますが、多人数との同時会話や、騒音下での会話は難しいことが多いです。人工内耳から聞こえる音に慣れ、効果的に聞き取れるようになるまで、数か月程度要することが多く、人工内耳の使用を続けることで、聞き取りが改善します。
更新:2024.10.08