頭頸部がん(悪性腫瘍)
概要
頭頸部がんとは、頭頸部に発症するがんのことで、聴器がん、鼻・副鼻腔(ふくびくう)がん、舌がん、口腔(こうくう)がん、咽頭(いんとう)がん、喉頭(こうとう)がん、唾液腺(だえきせん)がん、甲状腺(こうじょうせん)がんなどが含まれます。
頭頸部とは、頭頂部から鎖骨までの範囲を指し、食べる、飲む、話す、呼吸をするなど、人間が生きていく上で重要な部位が多く存在します。がん全体の約5%が、頭頸部に発生しています。
治療
頭頸部がんの治療は、主に以下の3つがあります。
- 手術治療
- 放射線治療
- 抗がん剤や分子標的薬(ぶんしひょうてきやく)などの薬を使う化学療法
実際の治療では、これら3つの治療を組み合わせて行っていきます。手術治療では、患部のがん組織をすべて取り除くため、がんが進行している場合は、手術後に食べる、話す、呼吸をするなどの機能に障害が出ることがあります。放射線治療や化学療法の副作用には、治療後の粘膜の乾燥、感覚や動きの低下などがあり、食事や呼吸に後遺症を残すことも少なくありません。
手術治療
咽頭がん、喉頭がんの内視鏡手術
早期の咽頭がん、喉頭がんでは、機能を温存し、体に負担の少ない内視鏡手術が可能です。内視鏡でがん組織を全摘出する治療です。従来の手術であれば、皮膚を大きく切開し、咽頭や喉頭の組織を広く切り取る必要がありましたが、内視鏡手術では、細い内視鏡を鼻腔や口腔から挿入し、標的となるがん組織をモニター画面上に映し出し、それを見ながらがんの部位をすべて摘出します。皮膚を切開しないので、体の負担が少ないだけでなく、直接見えないがん組織をはっきり観察することができ、咽頭や喉頭の正常組織をできるだけ残した上でがん組織を摘出することが可能なため、入院日数も短くなります。食べる、話すなどの機能が温存されるため、治療後の生活レベルの低下を防ぐことができます。
再建手術
進行した頭頸部がんの手術は、機能を温存することよりも、がん組織をすべて摘出し、がんを治すことが優先されます。このため進行がんの手術は、顔面や口腔、咽頭などの欠損が大きくなることも多く、欠損部分を補う再建手術を行う場合があります。
欠損部の再建は、患者さん自身の体の一部を用いて行います。欠損部の大きさに合わせ、胸、お腹、足などの皮膚・筋肉を採取し、欠損部分に移植します。咽頭の再建には、お腹の腸管の一部を用い、咽頭と食道をつなげることも可能です。顎などの骨の欠損には、肩甲骨(けんこうこつ)や腰、足の骨を一部切除して移植することも可能です。
このように再建した組織部分は、そのままでは血液が流れていないため生着しません。再建組織に血液が流れるように、採取した再建組織へ流れ込む動脈と静脈を、欠損部分に近い動脈と静脈に吻合(ふんごう)します。そうすることで、移植した皮膚と筋肉、腸管、骨などが元の組織と一体となります。
予防
頭頸部がんは、一般の健康診断で発見することが難しいため、喉(のど)の違和感、声がかれるなどの症状があった場合は、早めの受診が大切です。また、頭頸部がんの発症には、喫煙、飲酒が大きく関係しているため、禁煙、禁酒が最善の予防策です。喫煙、飲酒を続けている人は、していない人と比べて10倍以上の発症リスクがあることがわかっています。
更新:2022.08.22