失った体の部分を取り戻す(乳房再建/頭頸部再建)

浜松医科大学医学部附属病院

形成外科

静岡県浜松市東区半田山

形成外科とは?

がんの手術やけがにより失われてしまった体の部分を作り直す(再建)外科です。その方法は、患者さんの希望、病気の状態、仕事の内容、趣味、スポーツなど、さまざまな事情を考慮した、オーダーメード医療を基本としています。

乳房再建

乳がんの切除により失われた乳房を作り直します。その方法はさまざまですが、自家組織(患者さん自身の体の一部)を用いた方法と、インプラント(人工物)を用いた方法の、大きく2つに分かれます。

1.自家組織を用いた方法

①広背筋皮弁法(こうはいきんひべんほう)
背中の筋肉(広背筋)とその周りの脂肪や皮膚を、血管をつけた状態で胸に移動させます。取ってしまった筋肉の障害は、日常生活では大きく問題になりません(スキーのストック、ボートのオールを漕ぐ動作のように、腕を後方あるいは下方に引く運動を行う筋肉です)。背中の脂肪は少ないため、大きな胸の再建には適しません(図1)。

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図1 広背筋皮弁法
②腹直筋皮弁法(ふくちょくきんひべんほう)
お腹(なか)の筋肉(腹直筋)とその周りの脂肪や皮膚を、血管をつけた状態で、胸に移動させます。お腹は背中に比べ脂肪が多く、大きな胸の再建に適しています。お腹の手術を受けた方や、今後妊娠、出産を予定している方には適しません(図2)。

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図2 腹直筋皮弁法

2.インプラントを用いた方法

基本的に2回の手術が必要となります。

  1. 乳がん切除後に、胸の筋肉の下に、皮膚を伸ばす組織拡張器(ティッシュエキスパンダー)という風船のような袋を入れます。6か月前後かけて、組織拡張器の中に生理食塩水を注入し分に皮膚を伸ばします(図3)。
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    図3 ティシュエキスパンダー
    ティッシュエキスパンダーに、数か月かけて生理食塩水を注入します
  2. 皮膚が十分伸びたら、1回目の手術と同じ創(きず)からティッシュエキスパンダーをシリコンインプラントに入れ替えます(一次二期再建、図4)。
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    図4 シリコンインプラント
    皮膚が十分伸びたら、同じ創からティッシュエキスパンダーをシリコンインプラントに入れ替えます

こうした方法だけでなく、乳がんの手術で皮膚が切除されない場合は、ティッシュエキスパンダーを挿入せずに、シリコンインプラントを最初から入れる1回だけの手術も可能です(一次一期再建)。

頭頸部再建

耳鼻咽喉科や歯科口腔外科、脳神経外科で頭部や頸部(けいぶ)のがんを取り除いたあと、形や機能を元にもどす再建手術を行っています。さまざまな手術方法がありますが、なかでも遊離皮弁(ゆうりひべん)という方法を多く行っています。

遊離皮弁とは、腹部や背部、大腿(だいたい)(股関節から膝の部分)、下腿(かたい)(膝から足首の部分)などの離れた部位の皮膚や骨などを、がんを取り除いた部分に移植する方法です。皮膚や骨に血管をつけて採取して、移植先の血管と顕微鏡を使ってつなぎ合わせます。

移植する組織は、体のいたるところから採取できます。そのため、がんを取り除いた部位に似た組織を移植でき、より患者さんの状態に合った再建をすることができます。

例えば、下顎骨(かがくこつ)の一部を取り除いた場合には、遊離腓骨皮弁(ゆうりひこつひべん)という方法を行っています。下腿には2本の骨があり、外側に位置する腓骨という細い方の骨を、皮膚と一緒に血管を付けて取り出します(図5)。腓骨を取り出しても、歩行や足の運動などの機能は保たれます。その腓骨を加工して下顎の形に形成し、金属製のプレートで固定します。

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図5 腓骨皮弁

最近ではコンピューター上での3次元的なシミュレーション技術により手術計画を立て、金属プレートを作成する方法も行っています(図6)。

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図6 下顎骨の再建

頭頸部の再建では、食べること、飲むこと、話すことなどの機能を、できるだけ元の状態に近づけることをめざします。また頭部や頸部は外から見える部位でもあるので、整容面でも患者さんが満足できる結果をめざします。

がんの大きさ、患者さんの性別、年齢、ADL(日常生活動作)、体格、希望などを総合的に考えて、患者さん一人ひとりに最も適した再建方法を選択しています。

更新:2023.10.26