死因第一位のがんに注意、しかし多くは予防、早期発見が可能
済生会吹田病院
消化器内科
大阪府吹田市川園町
進歩が目覚ましい、がん治療
日本人は一生のうち2人に1人はがん(癌)にかかり、3人に1人はがんで死亡しています。以前、がんは不治の病と思われていましたが、現在は早期に発見し治療すれば多くのがんは完治します。一口にがんといっても、極めて進行が遅いものから、わずか1か月で体積が倍になる(doubling time/倍化時間)極めて進行の早いがんまでさまざまです。がんが小さい時期は発育も遅く、転移しにくい(高分化型がん)ですが、大きくなるにつれ転移しやすくなり(未分化型がん)、手術や根治的(こんちてき)治療ができなくなります。ただ、抗がん剤の進歩は目覚ましく、放射線治療も大変進歩しています。
例えば食道、胃、大腸などのがんは早期に発見すると、多くは入院することなく、内視鏡で切除できるため、早期発見・早期治療が重要です。
わが国で多い臓器別死因(表1)と発生頻度(ひんど)(表2)を記載しました。日本人に多かった胃がんはピロリ菌の除菌で、肝臓がんはウイルス肝炎の治療の進歩で、ここ数年確実に減少傾向にありますが、前立腺がん、乳がん、肺がん、大腸がん、膵臓(すいぞう)がんなどは増加しています。
1位 | 2位 | 3位 | 4位 | 5位 | ||
---|---|---|---|---|---|---|
男性 | 肺 | 胃 | 大腸 | 肝臓 | 膵臓 | 大腸を結腸と直腸に分けた場合、結腸4位、直腸7位 |
女性 | 大胃 | 肺 | 膵臓 | 胃 | 乳房 | 大腸を結腸と直腸に分けた場合、結腸2位、直腸9位 |
合計 | 肺 | 大腸 | 胃 | 膵臓 | 肝臓 | 大腸を結腸と直腸に分けた場合、結腸3位、直腸7位 |
1位 | 2位 | 3位 | 4位 | 5位 | ||
---|---|---|---|---|---|---|
男性 | 胃 | 肺 | 大腸 | 前立腺 | 肝臓 | 大腸を結腸と直腸に分けた場合、結腸4位、直腸5位 |
女性 | 乳房 | 大腸 | 胃 | 肺 | 子宮 | 大腸を結腸と直腸に分けた場合、結腸3位、直腸7位 |
合計 | 胃 | 大腸 | 肺 | 乳房 | 前立腺 | 大腸を結腸と直腸に分けた場合、結腸3位、直腸6位 |
(表1、2/出典:国立がん研究センターがん情報サービス「がん登録・統計」)
喫煙、肥満、大量飲酒などは、肺がん、食道がん、肝臓がん、膵臓がんなどの誘因になり、肥満や糖尿病患者さんからは種々のがんが発生しやすいため、このような方は十分な注意が必要です。
「表2」から分かるように、男性は胃がん、肺がん、大腸がん、前立腺がん、肝臓がんが多くを占めますが、これらのがんの多くは早期発見が可能です。例えば、前立腺がんは血液検査で前立腺がんのマーカーであるPSAを測定し、大腸がんや胃がんは便潜血反応を調べ、陽性なら胃・大腸内視鏡検査を受け、肺がんは胸部X線検査や胸部CT検査で、肝臓がんは血液検査(AFP、PIVKAⅡ)や腹部超音波検査を行えば、いずれも早期発見が可能です。内視鏡的治療など内科的治療で多くのがんは治療ができ、手術を受けても体にやさしい小手術で完治します。
女性のがんの大半は乳がん、大腸がん、胃がん、肺がん、子宮がんが占めるため、40歳を過ぎたら乳がんや子宮がんの検診を受け、ほかのがんは前述しました男性と同様の検査を受ければ、いずれも早期に発見でき、ほとんどの場合、命を落とすことはなくなります。乳がんや子宮がんの検査は、恥ずかしがらずに、ぜひ受けることをお勧めします。当院では女性医師が診療を担当します。なお、最近増加している膵臓がんは残念ながら早期発見も比較的難しく、かつ有効な治療薬がありません。また肝臓がんの多くは、慢性のウイルス肝炎を背景に発生しますので、早期にウイルス肝炎を治療すれば、肝臓がんの多くは発生を防止できます。
我慢せずに受診し、適切な検査を受けることが大切で、内視鏡検査も鎮静剤を使用すれば、患者さんが眠っている間に簡単に検査は終了します。
更新:2024.01.25