予防医療

済生会吹田病院

健康管理センター

大阪府吹田市川園町

予防医療とは

予防医療とは、病気にかからないように病気を未然に防ぐための医療です。

私たちは、なにか自覚症状があれば医療機関を受診します。そして病気が発見されると、手術を受けたり薬を服用したりします。このように医療機関で通常行われている医療は、病気になってから治療する医療です。

一方、予防医療は、もともと病気になりにくい体をつくり、病気を予防し、健康を維持するための医療です。そのためには食生活や運動、生活習慣(喫煙、大量飲酒、過食・偏食、肥満、睡眠不足など)を見直して健康を増進することが必要です。健康診断や人間ドックなどで、無症状のうちに病気を早期発見することも予防医療に含まれます。

一次予防と二次予防

予防医療には一次予防と二次予防があります。

一次予防とは、その疾患(例えばがんなど)にかかりにくくするためのものです。生活習慣を見直し、バランスのとれた食事をとること、適度な運動をすること、禁煙、節酒、塩分制限や肥満にならないようにすることが重要です。がんのリスクになるような感染症を治療することもがんの予防につながります。

二次予防とは、その疾患が重症化したり、命を落としたりすることがないようにするためのものです。このためには早期発見・早期治療が重要です。定期的に、検診や人間ドックを受診することが必要です(表)。

一次予防 健康増進、疾病予防 生活習慣の改善、禁煙、適切な運動、教育、予防接種など 人間ドック
二次予防 早期発見・早期治療 健康診断、がん検診
表 一次予防と二次予防

がんを始め、多くの慢性疾患は初期には自覚症状がないため、血液検査などで異常を指摘されても放置される方がいますが、自覚症状が出てからでは手遅れになることが多いことに注意してください。

生活習慣病

生活習慣病とは、その名が示すとおり、生活習慣が原因で発症する疾患のことです。糖尿病・高血圧症、脂質異常症などがあります。偏った食事の継続、運動不足、喫煙、過度の飲酒など、好ましくない習慣が積み重なると発症のリスクが高くなります。自覚症状がほとんどないため、気づかないうちに進行し、脳や心臓、血管などにダメージが蓄積されていきます。その結果、突然に心筋梗塞(しんきんこうそく)、脳卒中など、命にかかわる疾患を引き起こすことがあります。生活習慣の是正・栄養療法・運動療法をすること、必要があれば医療機関できちんと薬物療法を受けることが必要です。

肥満や糖尿病は、がん(肝臓、大腸、膵臓など種々の臓器のがん)、心筋梗塞、脳卒中など万病のもとで、食事や運動などに平素から注意しておくことが重要です。

栄養療法

生活習慣病を予防し、がんになりにくい体をつくるには、毎日の食生活の改善が重要です。食事は朝昼夕と偏りなくとることが大事です。寝る直前に夕食をとることは避けましょう。各栄養素をバランスよく摂取することが必要で、塩分は控えめにします。野菜・果物不足にならないように、またソーセージやサラミなどの加工肉をとり過ぎないようにしましょう。

食事はゆっくり、よく噛んで食べることが大事です。口腔内(こうくうない)を清潔に保つことも重要です。

糖尿病、高血圧、脂質異常症、肝疾患、腎疾患(じんしっかん)などで治療中の人は、病態に応じた食事療法が必要ですので、医師・管理栄養士の指示を守ってください。

運動療法

適度な運動を継続することは、生活習慣病やがんのリスクを下げます。急に激しい運動をすることは逆にけがをしたり、足腰に負担をかけたりします。運動は軽いものから始め、無理なく継続できるものにしましょう。厚生労働省では”健康づくりのための身体活動基準2013”を作成しています。それによると、歩行またはそれと同等以上の強度の身体活動を毎日60分行い、さらに息が弾み汗をかく程度の活発な運動を毎週60分行うことを指導しています。高齢の人はこれよりも緩やかな基準となっています。

現在、運動習慣のない人には、現在の身体活動量を少しでも増やすこと(例えば、今より毎日10分ずつ長く歩くようにする)、運動習慣を身につけること(具体的には、30分以上の運動を週2日以上行う)を推奨しています。

生活指導など

喫煙は肺がんなど種々のがんの死亡の原因とされています。がん以外にも慢性肺疾患の原因となり、心筋梗塞のリスクを上げます。禁煙はこれらの疾患のリスクを確実に下げ、早く禁煙するほどリスクが下がり、年齢を経てから禁煙しても効果があります。喫煙者以外の方も受動喫煙によって病気のリスクが上がります。たばこを吸えない環境をつくることも社会的に重要です。

飲酒に関しては、健康な人の場合、少量の飲酒は安全で、目安はアルコールに換算して1日に20g程度(日本酒1合程度)までです。多量の飲酒は健康を損ねます。喫煙者の飲酒は特にリスクが高く、食道がんの原因になります。

ある種のがんは感染症に関連があります。肝炎ウイルス(B型肝炎ウイルス・C型肝炎ウイルス)と肝臓がん、ヒトパピローマウイルスと子宮がん、ヘリコバクターピロリ菌と胃がんの関係は有名です。これらに感染しているかは検査をすれば分かります。また近年、治療法が進歩しており、感染症の治療をすることによって、がんのリスクを下げることができます。医療機関や人間ドック施設などで一度は検査を受けることをお勧めします。

健康食品や過度の運動など

最近は毎日のようにテレビ、新聞などで健康食品(飲料物も含む)や痩せるための運動などの広告を目にします。やせ薬などには健康を害する物質が含まれているものがあり、どこの国で作られているのか、信頼できる会社であるか否かなど、よく調べて購入することが大切です。これらによる肝障害で入院される方がいますし、過度な運動や急激な痩せ(体重減少)はしばしば健康を害します。日々バランスのとれた食生活を送れば、特別にいわゆる健康食品を摂取する必要はほとんどありません。

人間ドックを受けよう

わが国の予防医療において、人間ドックの果たした役割は大きいものがあります。1954年、東京第一病院で人間ドックが始まったとされています。艦船が航海を終えたあと、ドック[dock]に入り、船底についた貝殻を取り除いたり、エンジンや計器の整備をしたりすることになぞらえて、人間ドックという名称が生まれました(よく人間ドッグと誤って表記されますが、もちろんドッグ[dog]ではありません)。

人間ドックの目的は生活習慣の改善(一次予防)と、疾患の早期発見・早期治療(二次予防)を同時に行うことです。

1~2日間で、効率よくプログラムされたスケジュールに沿って人間ドックを行います。人間ドックの結果、異常がある項目については、生活習慣の是正・経過観察・要精密検査・要治療などの判定をし、受診者へ報告します。結果は放置せずに指示に従って、指導を受けること、医療機関を受診することが重要です。

人間ドックを行っている施設・医療機関はたくさんあり、どの施設を選ぶのか迷われることもあるかもしれません。疾患が疑われた場合にしかるべき医療機関への連携がスムーズに行われている施設、人間ドック健診専門医に認定された医師、保健師や管理栄養士が所属していて、生活指導・栄養指導が充実している施設を選ばれると良いでしょう。

健康の増進、疾患の早期発見・早期治療に役立てていただくため、定期的に人間ドックを受診することをお勧めします。当院では、2018年秋からJR岸辺駅前の医療ビルの中に最新の機器を揃えた健診センターをオープンします。

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更新:2024.01.26