頭頸部腫瘍ー上咽頭がん、喉頭がんの治療
済生会吹田病院
耳鼻いんこう科
大阪府吹田市川園町
上咽頭がんとは?
上咽頭(じょういんとう)とは鼻腔(びくう)に続く気道で、頭蓋底(とうがいてい)から硬口蓋(こうこうがい)の高さまでをいいます。
上咽頭がんの特徴としては、①がんが顔面深部にあり、手術的にアプローチしにくい、②早期より頸部(けいぶ)リンパ節転移をきたす、③肺などへの遠隔転移も多い、④脳神経症状を伴うことが多い、⑤経験的に放射線や抗がん剤が効きやすい、⑤発見しにくい、などが挙げられます。その発症にはEBウイルスの関与が指摘されています。
- 初発症状
- 耳が塞(ふさ)がった感じ(耳閉感(じへいかん))が続く(既に滲出性中耳炎(しんしゅつせいちゅうじえん)として治療されている場合もあります)、鼻づまり、鼻出血が続く、ものが二重に見える、視力が落ちた、上頸部に硬い腫瘤(しゅりゅう)(リンパ節)が触れる、頭痛などがあります。
- 治療方針
- 基本的には放射線治療を行います。頭蓋内へ浸潤(しんじゅん)するようなT4症例では、全身化学療法を先行させ全頸部照射、あるいは化学療法併用で照射をします。照射後、頸部転移リンパ節が残存すれば、頸部郭清(かくせい)術を行います。放射線治療後に、耳管(じかん)機能が低下し滲出性中耳炎を生じることがあり、一旦発症すると難治性です。また照射範囲に唾液腺(だえきせん)が含まれる場合は唾液分泌障害が起こります。
喉頭がんとは?
喉頭(こうとう)がんはその存在部位で3つに分類されます。声門(せいもん)がん(60%)・声門上がん(30%)・声門下がん(2%)、その他分類不能となります(図2)。
喫煙による発がんの危険性(吸わない人と比べた危険度)は、喉頭がんの場合は32・5倍とされています。つまり非喫煙者には喉頭がんは、ほとんどないということです(喉頭がん患者の97%はスモーカーです)。喉頭がんの特徴としては、①声門がんは症状が早期に出現するため早期がんが多い、②声門上がん、声門下がんは症状が出現しにくいため発見された時点で進行がんが多く、また早期から頸部リンパ節転移をきたすことがあります。
- 初発症状
- 風邪(かぜ)を引いていないのに声がかれる、いつまで経っても声がれが治らない、痰(たん)に血が混じる、呼吸困難感があるなどです。
- 治療方針
- ステージⅠ、Ⅱの早期がんの場合は放射線治療を優先しますが、効果がなければ、喉頭部分切除術、喉頭全摘出術を行います。ステージⅢ以上の進行がんの場合は原則として、喉頭全摘出術+転移側の頸部郭清術を行います。
喉頭全摘出術後の問題点としては、何より声を失うことです。喉頭全摘後の代用音声としては、食道発声、電気式人工喉頭、シャント発声などがあります(喉頭全摘を受けた患者さんの親睦会/阪喉会があり、代用音声の指導や生活上の相談などを行っています)。
更新:2024.10.04