慢性腎不全の患者さんに対する血液浄化療法

日本医科大学付属病院

腎臓内科

東京都文京区千駄木

慢性腎不全の患者さんに対する血液浄化療法

慢性腎不全とは?

尿タンパクなどの腎(じん)障害や、腎機能の低下(推定糸球体濾過量(しきゅうたいろかりょう)が60mL/分/体表面積1.73㎡以下の状態)が3か月以上続く場合を慢性腎臓病(まんせいじんぞうびょう)と言い(以前は慢性腎不全(じんふぜん)と言っていました)、進行すると慢性腎臓病のステージが上がっていきます。慢性腎臓病の重症度は5段階のステージに分かれており(図1)、ステージ5になりさまざまな身体症状が出てくると腎代替療法が必要になります。透析(とうせき)導入前の症状としては吐き気、食欲不振、下痢(げり)、息切れなどの貧血症状、むくみなどです。これらは透析を始めることによって改善します。しかし透析を導入し数年経過すると、ほかの合併症が出てきます。透析患者さんの死因の第1位は心不全(しんふぜん)で、感染症、悪性腫瘍(あくせいしゅよう)と続くため、透析導入後にも定期的な検査が必要です。

図
図1 腎不全のステージ分類

血液透析

当院では、救命センターや集中治療室に入院している患者さん以外は、血液浄化療法センターで透析を行います。透析用ベッドは15床あり、感染状態や透析の方法によってベッドを使い分けています。外来患者さんは約3分の1で、そのほかは入院の患者さん用のベッドとしています。

当院血液浄化療法センターは、ベッドとベッドの間隔が広く、部屋の中心部にスタッフカウンターがあるため、全体を見渡すことができ、患者さんの変化にすぐに気づけるスタイルになっています。また入院している患者さんは感染に弱くなっていることが多いので、感染対策として外来患者さんと入院患者さんのベッドエリアを分けています。

腹膜透析

当院では、患者さんの希望や生活スタイルに合わせて腹膜透析(ふくまくとうせき)を選択することも可能です。腹膜透析カテーテル(※1)の挿入手術も当科で行っていることが特徴です。これにより、入院、手術、その後の腹膜透析を始めるところまで、同じ主治医と一緒に治療を始めることができます。

腹膜透析は残っている腎臓機能を助ける治療ですので、腎臓の機能がなくなってしまった場合は、血液透析を週1回追加で始めたり、腹膜透析を卒業し血液透析へ移行していくことが必要となります。その際にも、当科だけでさまざまな準備を行うことができます。

※1 カテーテル:医療用の細い管

療法選択外来

腎不全を引き起こさないためには予防がとても重要ですが、患者さんの中には、腎機能が悪くなってきてしまい、腎代替療法(透析)を考えないといけなくなってしまう方もいます。そのような方に対して、当院では医師・看護師による「療法選択外来」を設けています。透析についてはよく知らない方も多いと思いますので、腎移植・血液透析・腹膜透析の詳しい話をし、いざ必要になったときにどの方法が一番良いか、選択ができるように心の準備や生活の準備をしてもらうための外来です。

透析室スタッフで作成したDVDを見ながら、医師・看護師でさらに詳しい説明を行い、透析療法に対する理解を深めてもらいます。そして、患者さんの病状、社会的背景、家族背景などを考慮し、みんなで相談しながら治療方法を決めていきます(図2)。

図
図2 療法選択DVD

当科の特色 血液浄化療法センター

外来には血液透析患者さん、腹膜透析患者さん、腎移植後の患者さんなど多数通院しています。それぞれの患者さんについては、複数の医師と看護師・薬剤師・栄養士・臨床工学技士など、多職種のメンバーによる会議で、治療方針はもちろんのこと、食事・運動・生活指導など、一人ひとりに適切なアドバイスができるように話し合っています。

また透析が始まったあとは近隣の透析クリニックに通院してもらうことが多いですが、疾患概要に記載したように透析患者さんにはさまざまな合併症が起きます。そのため、当院では「透析合併症外来」(図3)を開設し、透析開始後の健康管理にもしっかりと対応しています。

図
図3 透析合併症外来

感染症患者さんの受け入れにも力を入れており、近年流行したCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)の蔓延期も、透析患者さんの受け入れ数は減少していません(図4)。

図
図4 COVID-19受け入れ人数

また当院救命センター、心臓血管集中治療科、集中治療室、消化器センターとも強く連携しており、患者さんの急変時にはすぐに対応できます(図5)。

図
図5 透析患者さんの医療連携ネットワーク

診療実績(2022年度)

  • 血液透析、血液濾過透析 外来:2,662件、入院:3,102件
  • 血漿交換療法 48件
  • 腹水濃縮 29件
  • 顆粒級除去療法 21件
  • 血液吸着療法 19件
  • 骨髄濃縮 6件
  • LDLアフェレーシス 1件
  • バスキュラーアクセス手術:
    自己血管内シャント造設術 53件
    長期留置カテーテル挿入術 26件
    腹膜透析カテーテル挿入術 18件
    動脈表在化術 2件

更新:2025.12.12