多職種のアレルギーエデュケーターと取り組む 食物アレルギー
大垣市民病院
小児科
岐阜県大垣市南頬町
地域における小児アレルギーセンターの役割を果たす
当科は、長年小児アレルギーの診療に力を入れてきており、呼吸器内科とともに小児期から成人期までカバーする岐阜県のアレルギーセンターとして機能しています。小児のアレルギー専門医が2人在籍し、日本アレルギー学会の専門研修施設に認定されており、若手専門医の育成とともに、岐阜大学病院、長良医療センターなどのアレルギーセンター基幹施設とも連携して診療、研究にあたっています。
小児アレルギー疾患は増加していますが、中でも食物アレルギーの患者さんが増加しています。2012年12月、東京都の学校給食によるアナフィラキシーショックの死亡例を契機に、全国的にも食物アレルギーの医療体制の整備が進みました。そのなかで当科の主な役割は、適切な時期に、正確な食物アレルギーの診断を行うことと、アナフィラキシーなどの緊急対応です(図1)。
緊急の食物アレルギー症状に24時間365日対応する
当院は24時間体制の高次救命救急センター(ER)を併設しており、ERを受診する患者さんの20%は小児例です。食物アレルギー疾患においても、局所の皮膚症状などの軽症から、誤食によるアナフィラキシーショックの重症例まで、さまざまな患者さんが受診しますが、特に緊急対応が必要なアナフィラキシー症例には、いつでも対応できる体制を整えています。
2018年の当科のアレルギー外来について検討したところ、118人の方がアドレナリン自己注射を所持していました。その中の23人(19%)が、所持後も誤食等による食物アレルギー症状で来院しており、12人(10%)が院外でアドレナリン自己注射を使用していました(図2)。
食物負荷試験室の新設
食物アレルギーに対応するためには、まず正確な診断が必要です。食事摂取の詳細な問診と血液検査を参考にしますが、確定診断には食物負荷試験が必要です。
具体的には、まず疑いのある食物の目標摂取量を数回に分けて15分から30分間隔で摂取します。その後アレルギー症状がでないかどうか数時間観察します。大部分の方は安全に食べられますが、中には、アナフィラキシー症状が誘発される患者さんもあり、そのために十分な安全性を確保できる施設で行うことがガイドラインでも推奨されています。
当院では、アナフィラキシーなどの緊急時にも迅速に対応できるように、酸素吸入、緊急薬剤、医療用ベッド、ナースコールシステムを常備した負荷検査室を、アメニティーにも配慮した小児病棟のフロアに新設しました。病棟の専門スタッフも配置し十分な安全性を担保した上で、検査を希望する患者さんに適切な時期に検査を行うことが可能になりました。
多職種のアレルギーエデュケーターと取り組む食物アレルギー診療
増加する小児アレルギー疾患に対応するため、全国で医師、薬剤師、看護師、管理栄養士など、多職種で診療に取り組む小児アレルギーエデュケーター認定制度が始まっています。
当院では本年度より、病棟薬剤師が資格を取得し、活動を開始しています。一定の臨床経験と難関な試験を突破する必要がありますので、小児アレルギーエデュケーターの資格をもった薬剤師は、全国で53人しかおらず貴重な存在です。さらに当院では、小児病棟担当の看護師、管理栄養士も取得準備に入りました。
地域への食物アレルギーの啓蒙活動
当院は高度急性期病院であるとともに、地域の子どもたちを守る地域支援病院としての役割を担う必要があります。2014年から県医師会の依頼を受けて、地域の小中学校教諭に対して食物アレルギー・アナフィラキシー対応講習会の講師を務めてきました。
また2019年度は、保育園の食物アレルギーについて、大垣市こども支援課の幹部職員と意見交換を行いました。
その他のアレルギー疾患について
小児気管支喘息(きかんしぜんそく)は、ステロイド吸入療法の普及により、コントロールがよくなってきました。しかし未だ一定数ある難治例の管理や、プライマリーケア医が行う軽~中等症のコントロールの精度管理のために病診連携の重要性が増しています。
鼻アレルギーに対しては、成人例の有効性が示された舌下(ぜっか)免疫療法が小児へも適応が広がりました。
アトピー性皮膚炎の管理は、食物アレルギーの予防に重要なであることが最近分かってきており、これらの疾患分野も、他の診療科と連携して取り組んでいます。
更新:2024.01.26