医師と施設の充実で取り組む救命救急センター

大垣市民病院

救命救急センター

岐阜県大垣市南頬町

大垣市民病院の救命救急センターは1994年に創設され、2012年に現施設の開設となりました。

当院の救急外来の年間送受診患者数は約40,000人で、そのうちの救急車受け入れ患者数は10,000人を超えます。これは全国に289施設ある救命救急センターの中でも受け入れ件数はトップクラスで、2017年、2018年の年間受け入れ救急車搬送人員数はともに全国で7番目となっています。もちろん岐阜県では長きにわたり、受け入れ救急車搬送人員数はトップを維持し続けています。

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写真1 救命救急センター外観

救急外来で働く医師「救急医」とは?

救急医の役割は、病院ごとに異なります。

東京や大阪の救命センターの多くは「独立型」といって、入院から退院までのすべてを救急医が行うシステムです。ドクターヘリで患者を救う人気の救急医療ドラマも独立型救命救急センターが舞台です。また、集中治療型といって重症患者を中心に診察する救急医もいます。

私たちは「北米型/ER型」というスタイルで働いています。簡単にいうと救急外来のみを主戦場として働き、患者さんの診断および初期治療を行います。入院が必要な患者さんの治療は、それぞれの科の医師が行います。

当院のように救急受診患者数が非常に多い病院では、受診するすべての患者さんに専門医の診察が必要なわけではありません。例えば「腹痛」の患者さんの多くは消化器系の疾患かもしれませんが、心筋梗塞(しんきんこうそく)や腹部大動脈瘤(ふくぶだいどうみゃくりゅう)といった緊急度の高い循環器疾患かもしれません。また、帯状疱疹(たいじょうほうしん)のような皮膚科疾患や婦人科疾患、泌尿器科疾患かもしれません。

これらを速く適切に診断し、入院が必要かどうか、専門科での緊急治療が必要かどうかなどを判断するのが私たちER型救急医の役割です。専門科は自分の専門分野の患者さんの診療に集中でき、複数の臓器領域の患者さんを同時に診察することもできるので、当院のように患者数が多い病院では私たちER型救急医は非常に役に立ちます。

当院の救急医は2012年までは1人でしたが、現在は4人となりました。ほとんどは当院で初期臨床研修を行い、そのまま当院の救急医になった「生え抜き」の医師たちです。専門科に細分化されている当院の中で「総合医=ジェネラリスト」が若い医師の注目を集めることは「革命」といってもよい出来事です。

さらに当院は全国トップクラスの件数を受け入れ、救急医療に必要なほぼすべての診療科の医師が在籍しています。地域で発生するほぼすべての症例を経験できることは、当院の臨床研修の大きな強みとなっています。

充実した専門科のバックアップ体制

救急診療は時間との戦いです。特に緊急治療を必要とする虚血性心疾患(きょけつせいしんしっかん)、脳卒中、多発外傷については診療時間外であっても24時間体制で対応しています。

当院が救急患者を断らずに受け入れられる一番の強みは、充実した専門科のバックアップ体制にあります。当院には25診療科、170人を超える専攻医、専門医が勤務しており、救急外来からの依頼に応じて専門的治療を受けることができます。

なかでも緊急性の高い脳卒中については、脳卒中当直医を24時間体制で院内に待機させるようにしており、循環器科医もほとんどの時間帯を院内で待機しています。多発外傷については、夜間であっても消防からの重症患者受け入れ要請の連絡があった時点で、院外医師への応援要請を行うなど積極的に取り組んでいます。

そのほかにも、重症熱傷や四肢(しし)の多発骨折、マムシ咬傷(こうしょう)、アナフィラキシー、敗血症性ショックなど専門科の知識と全身管理が必要な場合については、専門科と救急医、集中治療医が協力して、さまざまなチームと連携して患者さんの診療にあたっており、地域に発生するほとんどの救急疾患は、当院で診療の完結が可能となっています。

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写真2 重症患者処置室

医師だけじゃない!ERを支えるスタッフ陣

たくさんの患者さんを効率よく診察するために、多くの医療スタッフが協力しています。

看護師は「トリアージ」といって、簡単な問診や診察から緊急性が高いと思われる患者さんをピックアップして、迅速な診察が受けられるようにしています。

放射線技師はCT検査などで異常が見つかった場合に、速やかに医師に連絡する補助読影を行っています。高度な医療機器を必要とする場合には、医療工学士が院内に待機しており、常時必要な機械が使えるように準備しています。

そのほか、薬剤師や検査技師も常時院内に待機しており、薬の処方や緊急検査が常に行えるように、万全の体制を整えています。

設備の充実

医師の充実とともに施設の充実も大切な要素です。

特に近年は超音波機器の進歩も目覚ましく、超音波機器を聴診器のように使いこなせた方がよいといわれています。当院では救急外来専用の高性能の超音波機器を3台そろえており、いつどんなタイミングでも超音波検査が可能です。

また救命センター内のCT装置は320列で、緊急カテーテル検査を行わなくても冠動脈CTなどの比較的低侵襲(ていしんしゅう)な専門検査も可能となっています。もちろん緊急の上部内視鏡や、血管造影以外のX線透視も救急外来で施行可能です。

近年は、ポータブルX線カセットをフラットパネルディテクタにすることで、カセットを取り代えなくても連続撮影が可能となり、救急処置室内での心肺停止患者に対するPCPS(経皮的心肺補助法)や、重症出血患者へのREBOA(大動脈内バルーン遮断)を、速やかに行えるようになりました。

MRI検査も脳卒中や頚椎(けいつい)骨折などの緊急疾患に対しては、24時間体制での検査が可能です。

初期治療後も重点的なケアが必要な患者さんについては、救命救急センターの2階にある救急病棟(26床)で24時間体制で専門的なケアを行っています。

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写真3 初療室

いつでも救急医療を安心して受けられるように

このように救急外来では、24時間365日いつでも安心して救急医療を受けられるように取り組んでいます。救急医療への需要が高まる中、限られた医療資源で期待に応えることは決して楽なことではありませんが、緊急治療が必要な患者さんに対して、必要な治療が速やかに提供できるよう病院全体でカバーしていきたいと考えています。

更新:2022.03.08