早産児に対する、より肺にやさしい呼吸管理 早産児、新生児呼吸窮迫症候群、慢性肺疾患

大垣市民病院

第二小児科

岐阜県大垣市南頬町

INSUREメソッド

大垣市民病院新生児集中治療室(NICU)は、西濃医療圏の新生児医療の基幹病院です。年間200人前後の病的新生児の治療を行っていますが、その中で一番多いのは、在胎37週未満で出生した早産児です。

早産児は各種臓器が未熟なままで出生するため、さまざまなサポートを要することが多いです。NICUではその子の病態に応じて、呼吸・循環・神経系・腎臓(じんぞう)・消化管などすべての臓器に対応した全身管理を行っています(写真1)。

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写真1 NICU全景

特に出生体重が1,500g未満の極低出生体重児(ごくていしゅっせいたいじゅうじ)や1,000g未満の超低出生体重児(ちょうていしゅっせいたいじゅうじ)は臓器の未熟性が強く、臓器の成熟や体重の増加を待つために3~4か月前後の入院を要します。その間、未熟な赤ちゃんの管理で要となるのが呼吸管理です。

満期で生まれた赤ちゃんは当たり前のように呼吸をしますが、極低出生体重児や超低出生体重児の赤ちゃんは肺や呼吸中枢が未熟なため、十分に呼吸ができないことがあります。その場合、一定期間人工呼吸器で呼吸サポートをする必要があります(写真2)。

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写真2 人工呼吸器による呼吸管理写

また、生まれた直後に呼吸がうまくできないのは、肺が未熟で十分に拡張できないことが原因の場合があり、このような病態を新生児呼吸窮迫症候群(しんせいじこきゅうきゅうはくしょうこうぐん)(RDS)といいます。RDSの治療は、未熟な肺が拡張できるように、肺の中にサーファクタントという薬を投与することで劇的に改善することが多いです。

INSUREとは、Intubation(挿管)、Surfactant(サーファクタント投与)、Extubation(抜管)の頭文字からなる造語です。

サーファクタントは挿管しなければ投与することはできず、従来はサーファクタント投与を行ったあとも挿管したままで人工呼吸を継続していました。INSUREメソッドは、サーファクタント投与後すぐに抜管し、人工呼吸器を使用せずに呼吸サポートする方法です(写真3)。ここ数年の間に国内のNICUにも広がってきている方法で、当院でも積極的にINSUREメソッドを取り入れています。

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写真3 経鼻陽圧換気による呼吸管理

INSUREメソッドの利点は、挿管して人工呼吸器を使用した場合に起こる合併症(呼吸器関連肺炎、慢性肺疾患など)を減らせることが挙げられます。ただし未熟性が強い場合やRDSの症状が強い場合は、INSUREメソッドが成功しない場合があり、当科では最適な症例を十分検討した上で、安全に治療が行えるように努めています。

NAVA

前述したように、早産児では、INSUREメソッドで早期に人工呼吸管理から離脱できる赤ちゃんもいますが、特に超低出生体重児では1~2か月ほどの長期間人工呼吸器のサポートが必要となる赤ちゃんも多くいます。

人工呼吸器でのサポートをより自然に、赤ちゃんの負担にならないように行うための工夫がNAVA(Neurally Adjusted Ventilatory Assist:神経調節換気補助)です。これは鼻から胃の中に入れたチューブで横隔膜の電気活動を検出し、赤ちゃんの呼吸に同調して呼吸補助を行う方法です。

NAVAの利点は、自発呼吸への同期性が良いこと、呼吸努力に応じて呼吸補助の強さが変化すること(余計な吸気圧をかけない)、横隔膜などの呼吸筋の廃用を防止することです。私たち新生児科医にとって、より理想的な人工呼吸サポートが期待でき、人工呼吸期間を短くすることで慢性肺疾患を減らすことが期待できます。

欠点として、横隔膜の電気活動を検出するために特別なチューブが必要で、センサーを細かく位置調節する必要があること、横隔膜の電気活動をしっかり検出できないとうまく呼吸サポートできないことなどがあり、日々工夫をしながらより良い人工呼吸サポートを目指しています。

以上のように、非生理的な人工呼吸サポートをできるだけ減らし、できるだけ赤ちゃんに負担のかからない人工呼吸サポートを行うことで、早産児のより良い呼吸予後、生命予後に寄与できるように努力しています。

【参考文献】
・『周産期医学必修知識』Vol.46 増刊号:576-578、大曽根義輝、東京医学社、2016年
・『日本新生児成育医学会雑誌』30(3):752、前田剛志、2018年
・『人工呼吸』29(2)Web版、高橋大二郎、2012年

更新:2024.09.30