最新のバーチャル大腸画像検査法 CTコロノグラフィー検査(CTC)

大垣市民病院

放射線診断科

岐阜県大垣市南頬町

CTCの概要と当院での導入経緯について

CTコロノグラフィー検査(CTC)とは、CTで大腸内視鏡検査やバリウム注腸X線検査(注腸X線)のような、バーチャル画像が得られる検査法です。海外では20年以上の歴史がある検査ですが、国内では内視鏡などほかの検査の精度が高いため、普及しませんでした。

しかしコンピューターのめざましい進歩によって、3次元画像処理を行うワークステーションが普及し、高精度の画像が得られるようになったため、国内でも広く行われるようになりました。2012年にCTCが保険収載されると当院で導入が決まり、医師と診療放射線技師でトレーニングを積んだ上で、2013年3月から一般診療でのCTC検査を開始しました。

CTCでは、撮影前に腸管の前処置(下剤で便を出しておく)と、腸管拡張(大腸をガスでふくらませる)が必要です。その後、腹部のCTを撮影し、ワークステーションで大腸像を抽出して、さまざまな3次元表示を行います。代表的な表示法として、バーチャル内視鏡像(図1、2)とバーチャルX線像(図3)があり、ほかにも切除標本像、多断面表示像、通常CT像などがあります。これらを組み合わせて、大腸がんや大腸ポリープの診断を行います。

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図1 バーチャル内視鏡像(全周性の上行結腸がん)
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図2 バーチャル内視鏡像(4mm 大の横行結腸ポリープ)
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図3 バーチャルX線像(正常者)

CTCの診断能力はかなり高く、ポリープ発見を大腸内視鏡と比較した報告によると、大きさ6mm以上のポリープの90%が発見可能とされています。弱点は、平坦な腫瘍の発見が苦手なことです。

CTCは画像の読影診断が難しいので、CTの知識だけでは不十分で、大腸疾患診療の経験豊富な医師と診療放射線技師が主体で運営する必要があります。当院のスタッフは内視鏡と注腸X線の経験が豊富であるため、スムーズに導入できました。また導入後のCTC検査で多くのがんとポリープを発見しています。

人間ドックにおけるCTCについて

大腸がんによる死亡率は増加傾向にあり、男性では肺がん、胃がんについで3位、女性では1位です。しかし大腸がんは進行が比較的遅く、早期発見•早期治療すれば予後が良好です。

当院の健康管理科では大腸がん検診に力を入れており、以前より便潜血検査と注腸X線を行ってきました。しかし注腸X線は受診者の苦痛がやや多く、得られる画像が不安定だという欠点があります。そこで人間ドックにもCTCを導入できるように、医師と診療放射線技師、看護師、事務職員で、東海地区の有名ドック施設を見学しました。そして、下剤などの前処置法を決定し、検査説明•同意書や読影診断基準を整備した上で、2014年4月にCTC検診を開始したのです。

ドックでの検査法について、詳しく説明します。前処置は、残渣(ざんさ)の少ない特別な検査食と、錠剤や液体の下剤、水分摂取を組み合わせて行います。しかし多少は便が残るので、下剤にガストログラフィンという造影剤を混ぜて高濃度にしておき、残便が白く写るようにします(図4)。これをタギング(便標識)といい、診断時の便とポリープの区別に必要不可欠です。

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図4 タギング後CT像
(前処置で飲用した高濃度液が大腸内にたまっている)

拡張は、細く柔らかいチューブを直腸に挿入し、鎮痙剤を筋肉注射して大腸の緊張を取った後に、専用の機器で炭酸ガスを自動的に持続注入します。炭酸ガスは空気と比べて速やかに腸管から吸収されるので、検査後の苦痛がほとんどありません。また、圧力が上昇すると注入が停止するため、非常に安全です。

背臥位(はいがい)(あおむけ)と腹臥位(ふくがい)(はらばい)で撮影し、さらに両側臥位(りょうがわがい)(左下と右下)で撮影するので、計4回の撮影となりますが、検査時間は12分程度で済みます。もちろん、被曝(ひばく)を減らすために低線量の撮影を行っていますので、被曝量は8ミリシーベルトと、注腸X線の半分以下です。

現在(2019年7月)までに、ドックCTC検査を221人に実施し(県下で2番目の件数)、注腸X線に比べて楽な検査であると好評です。要精査率は9%で、1人の早期がんと10人のポリープを発見し、その後、11人全員が内視鏡切除で治癒しました。

CTCは健康管理科の大腸検査として完全に定着しています。ただし、マンパワーとCT台数が少ないため、毎週2人の枠しかなく、需要に十分応えられていないのが現状です。

一般診療におけるCTCについて

一般診療でのCTC検査は、当初は消化器内科の依頼で大腸内視鏡検査と同じ日に行っていました。対象は、手術が必要な腫瘍(しゅよう)が内視鏡で発見された患者さんと、大腸の屈曲が強くて内視鏡で大腸の奥まで観察できなかった患者さんです。いずれも、従来は日を改めて下剤による前処置をかけた上で、注腸X線検査を実施していましたので、CTCは患者さんに非常に大きなメリットがありました。

その後、人間ドック導入時にタギングによる前処置法や同意書などを整えたため、2014年4月から外来での予定検査ができるようになりました。主に、市町村の便潜血検査陽性で要精密検査になった場合や、癒着(ゆちゃく)などで内視鏡検査が難しい場合、他施設からの依頼があった場合に行っており、診療上おおいに役立っています。一般診療での検査人数は341人で、これも県下で2番目の件数です。

このように、CTCは当院での大腸疾患診療の重要なツールの1つとなり、今後ますます発展していく勢いです。

更新:2024.10.25