不育症による流産の治療-不育症

富山大学附属病院

産科婦人科

富山県富山市杉谷

不育症とは、どんな病気ですか?

2回続けて流産を繰り返した場合、不育症と診断されます。1回目の妊娠の際は何もなく、元気な赤ちゃんが生まれたのに、2回目、3回目の妊娠で流産となった場合も、不育症に含まれます。

不育症は、とても珍しい病気でしょうか?

妊娠した場合、15%が自然に流産をしてしまいます。流産を2回以上繰り返す不育症例は、国内で約2~3万人いると考えられています。ですから、富山県でも200~300人の方が不育症で悩んでおられることになります。決して珍しい病気ではありません。

不妊症と不育症を併せ持つことがあるのでしょうか?

当院のデータでは不育症患者さんの20~30%の方が、不妊症と不育症を併せ持っています。その場合、妊娠するまでは不妊症の治療を行い、妊娠してから不育症の治療を不育症専門外来で行います。

不育症のことで相談や受診をしたいのですが?

不育症に関する相談窓口が富山県不妊専門相談センター(図1)。電話相談と面接相談がありますので、電話で確認してください。北陸で不育症外来を開設している病院は、当院と新潟大学医歯学総合病院の2施設です。当院では月曜・水曜・金曜に不育症外来を開設しています。近くの産婦人科の先生に紹介状を書いていただき、受診されることをお勧めします。

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図1 不育症に関する相談窓口

不育症の検査で、どんなことが分かるのでしょうか?

「図2」に示すように不育症のリスク因子には子宮の形が悪いもの(7.8%)、甲状腺機能障害(6.8%)、染色体構造異常(4.6%)、抗リン脂質抗体陽性(10.2%)、第XII因子欠乏(7.2%)、プロテインS欠乏(7.4%)、プロテインC欠乏(0.2%)があります。そのほか、保険診療ではありませんが、自費診療で抗PE抗体陽性(22.6%)、NK細胞活性高値(約20%)がリスク因子となります。それぞれのリスク因子に添った治療を行います。

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図2 不育症のリスク因子別頻度

子宮の形は超音波やMRI検査を行い、重症例では子宮の整形手術を行います。甲状腺機能障害は薬で治療します。染色体構造異常の場合はカウンセリングを行い、抗リン脂質抗体、第XII因子欠乏症、プロテインS欠乏症、プロテインC欠乏症では血栓のため流産が起こるので、血栓を予防する薬(アスピリンやヘパリン)を使用します。NK細胞活性高値の場合、赤ちゃんが拒絶反応のため流産するので、プレドニゾロンという薬や漢方薬で、NK細胞活性を正常化させてから妊娠してもらいます。

不育症の検査や治療に対しての補助はありますか?

不育症の検査の多くは保険で行いますが一部は保険が適用されず、1万8000円程度の自費検査となります。2017年から、富山県の全市町村で不育症治療の補助が出ることになりました。詳しくは各市町村にお尋ねください。

不育症で治療すると赤ちゃんを持てますか?

当院の成績では約70%の方が、治療後の妊娠で流産をせずに経過しています。流産した赤ちゃんの染色体異常を除くと(健常人に起こる約15%の流産の大半は赤ちゃんの染色体異常と考えられています)、次回妊娠時の生児獲得率(成功率)は90%となっています。流産の後で悩んでおられる方も多いと思いますが、まずは受診して流産のリスクを見つけ出し、治療されることをお勧めします。

検査をしても、何のリスク因子もないと言われました

不育症の検査を行ってもリスク因子が見つからない方が65%います。これは偶発的に赤ちゃんの染色体異常による妊娠が繰り返された場合か、検査では検出されない未知のリスク因子が潜んでいるかのどちらかです。このような方には特別な治療を行わず、次回の妊娠に臨んでもらっています。その結果、次回の妊娠では70%以上の方が生児を得ています。ただし、Tender loving care(テンダー・ラビング・ケア)といって家族、特にご主人が次回の妊娠の際、できるだけやさしくしてパートナーの不安を取ってもらうように指導しています。この方法の有効性は世界でも認められている治療法の1つです。

ストレスと不育症

流産したという悲しみの感情は男女間で大きく異なります。女性は多くの場合、長期間、流産の悲しみが忘れられません。流産後の悲しみに男女差があることを、男性は理解してあげてください。次回妊娠した際も、また流産するのではないかと女性は不安になるため、パートナーが精神的なサポートをすることは極めて重要です。

更新:2024.01.26