最新の網膜硝子体手術
愛知医科大学病院
眼科
愛知県長久手市岩作雁又
網膜硝子体手術とは
網膜硝子体手術(もうまくしょうしたいしゅじゅつ)とは、光を感じる神経である網膜、および、その周囲の病変を対象とする手術の総称です(図)。実際の手術は、「写真1、2」のように顕微鏡を用いて白目のところに数か所、ポートと呼ばれる穴をあけ、そこから眼内を照らすライトや眼内で操作を行う器具を出し入れしながら行います。
網膜は損傷すると再生しないため、病気の進行により手遅れとなる前に手術を行う必要があります。また、手術自体の網膜へのダメージを避けるため、迅速かつ低侵襲(ていしんしゅう)な、眼にやさしい手術を行わないといけません。
小さな器具で行う網膜硝子体手術システム
眼にやさしい手術を行うには、使用する器具を小さくする必要があります。当院では、現時点で使用できる一番小さな規格の網膜硝子体手術システムを、全国でいち早く導入しています。
小さな器具を用いるメリットは、これまでのシステムよりも小さな傷口で手術が行えるので、糸で縫わなくてもよく、術後の回復が早いことが挙げられます。それによって、日帰り手術や短期入院での治療が可能です。また、わずかな間隙(かんげき)に器具を入れて作業ができることで、増殖膜などを今までよりも細かいところまで、安全に除去することができるようになりました(写真3、4)。
手術後の患者さんの負担を軽減
当院では治療が困難な疾患を数多く手がけていますが、重症であっても、患者さんが術後にスムーズな社会復帰ができるように心がけています。
例えば黄斑円孔(おうはんえんこう)や網膜剥離(もうまくはくり)の手術後は、今まではうつ伏せなど、下向きの体位で過ごすことが必要とされていましたが、当院では、極力下向きをしなくてもよい手術と術後管理を行っています。1日中、しかも1週間近くうつむきを強いることは、患者さんにとってかなり大きな負担でしたので、「当院での手術後は、下向きをしなくていいですよ」と言うと、とても喜ばれます。
より安全に手術を行う、3D顕微鏡映像システム
当院では、手術に用いる顕微鏡に関しても、手術画像を3D化してモニターに映し出し、それを見ながら手術する新システムを全国でいち早く導入しました(写真5)
この3D顕微鏡映像システムは、手術映像をリアルタイムでデジタル化することにより、見やすい映像に変換できるため、より安全に手術を行えます(写真6)。また、従来の顕微鏡では見えなかったものまで、見ながら手術を行える可能性を秘めているシステムです。
当院では、今後この分野のパイオニアとして、国内外での講演や発表など、情報発信を行っていきます。
更新:2024.10.18