胃がんの病状に応じた手術を選択し、患者さんへ安心と最適医療を提供

愛知医科大学病院

消火器外科

愛知県長久手市岩作雁又

胃がんの患者さんへのメッセージ

国内では、胃がんになる患者さんは年々減っていますが、いまだ多いがんです(図1、2016年の罹患(りかん)数予測では、男女を合わせると大腸がん(結腸がん、直腸がん)に次いで2番目に多いがんです)。

グラフ
図1 がん罹患数予想(男女・臓器別)

患者さんに伝えたいのは、胃がんになったことに過剰な反応をせず、まずは病気を知ろうということです。胃がんは、今では治りやすいがんの1つです。私たち専門医とともに最適な胃がん治療を追求し、手術を乗り越えて、病気を克服しましょう。

それぞれの患者さんの全体を診た最良の手術治療を提案

胃がんにはステージ(病期)があり、がんの深さ、リンパ節転移の程度、遠隔転移の有無によって、さまざまな段階に分類されています(表)。私たちは、胃がんを確実に治すために、切除する胃やリンパ節の範囲はステージによって決定しています。

表
表 胃がんのステージ

進行した胃がんの患者さんには、通常の開腹手術だけでなく、抗がん剤を使用した根治性の高い治療や、肝臓や十二指腸、膵臓(すいぞう)などを切除する治療(拡大手術、図2)を選択することもあります。また、ステージのみならず、患者さん個々の全体を診て、根治性と体の状態のバランスを追求した手術治療を提案しています。

イラスト
図2 拡大手術例(肝切除)

胃がんの切除範囲について

胃がんの手術には、幽門側胃切除術(ゆうもんそくいせつじょじゅつ)、胃全摘術、噴門側胃切除術(ふんもんそくいせつじょじゅつ)などがあります。ここでは、最も多い手術である、幽門側胃切除術について説明します。幽門側胃切除は、胃を3分の2~4分の3程度切り、胃周囲のリンパ節を一緒に切除する手術です。胃を切った後は、残った胃をそのまま十二指腸につなぐ方法(ビルロートⅠ法)が最も一般的です(図3)。

イラスト
図3 幽門側胃切除と吻合法

胃がんの腹腔鏡手術について

胃がんの腹腔鏡手術(ふくくうきょうしゅじゅつ)は、お腹(なか)に複数の穴をあけ、カメラと手術器具を入れて、モニター画像を見ながら手術を行います(写真)。メリットの1つは、開腹手術に比べ、傷が小さく痛みが少ないため、体にやさしいことです。手術器具と技術は年々進歩しており、現在は、通常の開腹手術と同程度の手術が可能です。

写真
写真 最新の3Dモニターを使用した胃がんの腹腔鏡手術

当科では、2016年度に胃がんの手術を受けた患者さんは67人で、うち27人が腹腔鏡での手術でした。2017年度は、腹腔鏡手術を受けた患者さんはさらに増加傾向で、腹腔鏡手術の資格を持つ医師(内視鏡外科学全技術認定医)が執刀しています。

胃がん手術後の診療連携

当科外来では、かかりつけ医と連携し(2人の主治医)、患者さんの治療経過を共有できる「治療計画表(地域連携クリニカルパス)」を活用して、治療や再発のチェックを行うことが多くなっています。

また、再発が見つかったときは、適切な抗がん剤投与のために、当院臨床腫瘍センターと連携して治療にあたっています。

更新:2024.01.25